『題名何にしようか』



「うーん…」



『初めての作品だもんね』



「そだねぇ…」



『1回きりかもね…これやるの』



「あ…そだ!oneってどお?」



『いいね!!』



「サブタイトルとか決めなんよね…」



『そゆのあると、なんかカッチョイイね(笑)』



「何にしようかなぁ…」



『何にしようかねぇ…』



「扉ってどお?」



『扉?』



「うん」



『何の扉?』



「心」



『へぇ…心の扉かぁ、素敵』



「うん!」



『誰の心?』



「みゆの」



『みゆの心の扉がどうしたの?』



「開いた」



『おお』



「信じれる人に出会えたから」



『まさかっ!ゆき先生とか言うんやろ~( ̄▽ ̄)』



「そ」



『泣くやん、やめろ( ̄▽ ̄;)』



「ゆき先生と出会えたから頑張れたし」



『泣くやん、やめろ』



「ありがと」



『泣くやん、やめろ』






みゆは踊りを本気で学びたいと言った。



君が本気なら…
あたしも本気で付き合うよ。



そう言って、ダンスの先生を探した。



ダンスなんて畑違いすぎて…
どっからどう手を付けていいかわからなかった。



でも本気ならきっと誰かが助けてくれる。



そう信じて探した。






『菊池広報に載ってた陶芸家の奥さん、確か…日女舞踊科だったような』


冨田ねーさんがいった。


すぐ広報の人に電話をした。


とりあえず…
女性、体育、ダンス…
よし、島津先生にも連絡しておこう。




広報の方を通して陶芸家の旦那様から奥さんへと繋がった。




『うちの生徒にダンスを教えてください』


みゆの夢を本気で語った。


「私でよければ」





これが、えりささんとの出会い。


えりささんが週二日ほど指導をしてくれることになった。


えりささんの動きはとてもしなやかで美しかった。


えりささんはいつも一緒に踊りながら指導をしてくれた。


バトンの動きから新しくモダンの動きが加わり…

みゆはいつもあちこち痛いと言った。

今まで使ったことのないところをたくさん使ってるんだろうなって。

そう思ってあたしは嬉しくなった。



みゆはどんどん上手になった。

素人目でもそれがわかるほどだった。



えりささんは同級生のゆっこさんを福岡から呼んでくれた。

ゆっこさんはダンスの強豪校若葉から日女というダンスのスペシャリストだった。


ゆっこさんは情熱的な人で。

一度始まったら6、7時間くらいぶっ続けで練習するのなんてざらだった。



みゆは普段、体育館の片隅で練習をしている。


1人ぼっちで練習している。


あたしには何もわからないから…


みゆを放置している。


稽古が終わると、ただみゆの傍にいた。


ただ、頑張れ頑張れと眺めることしか私はできない。


でも心からみゆを応援した。


ある日、島津先生から連絡が入った。


『緒方ー!北高にダンス専門の先生おるから話通しとったばい!』


「ありがとうございます!!」


すぐ先生に電話をした。


電話越しに素敵な人だとわかった。



これが園田先生との出会い。



園田先生は北高のダンス部の先生。


熊本で一番になって全国大会につれてった先生。


園田先生は北高の子達と同じようにみゆを大切にしてくれた。


1つ1つ丁寧に…

1つ1つ噛み砕いて…

その1つ1つが…

ド素人のあたしでもできそうって勘違いするほどわかり易かった。


先生って生き物は…
やっぱりすごい。

導く力と…
絶対的な愛だね。

園田先生見てたら…

先生って仕事が誇らしく感じた。



園田先生が神戸の全国大会の結果を見せてくれた。

そこに…

環太平洋大学という名前があった。


環太平洋大学はとても縁深い大学。


こーいちさんのお師匠さんの櫻間先生がいるところ。


ダンス部があるんだぁ…


とりあえず…
櫻間先生に電話してみた。


『おーゆきちゃんどしたん?』


「先生、剣道の話じゃないです(笑)」


『おーなんやー(笑)』


「ダンスの先生に繋いでほしいんです」


『おーわかったー!話しとく!』


櫻間先生がダンスの先生に話をしてくれた。


数日後、小澤先生と繋がった。


シャキシャキっとした先生だった。


絶対カッコイイ人に違いない。


顔は知らないけど…
なんとなく人柄が見えた。


小澤先生って…
どんなダンス踊るんだろう。


すごく興味がわいた。


ゆっこさんから小澤先生のDVDを見せてもらった。


レミゼの I Dreamed a Dreamだった。

凄かった。
細胞レベルで興奮した。


ダンスの世界が全くわからない私にとって…
小澤先生の存在はとても大きかった。

あまりにも無知すぎて無茶苦茶な相談をした。

大学受験までの流れがわからなかったし…

ダンスの世界がまず見えなかった。



もちろんコネクションは…
その子のバックボーンが見えるわけで。

必要なのはわかるし。
あって当然だと思っている。

それはどの世界でも同じ。

だけど現実みゆにはそれがない。

どこをどう進んでいいのか。

本当に見えなかった。



小澤先生はわけもわからない剣道人にいつも勇気をくれた。

失礼な話ばかりしてるのは重々承知していた。

でも…
頼るところが先生しかいなくて。

違う大学の相談も。
超失礼なお願いも。

とりあえず何でも話を聞いてくれた。

迷ってる時間も。
悩んでる時間もなかった。

だって…
あたしは答えを持っていなかったから。

頼るしかなかった。

早く小澤先生に会いたい。

必ず会って、目一杯の感謝を伝えたい。





来週、みゆはでっかい夢にチャレンジする。




たくさんの人達に支えられ…
新しく扉を開ける。




ようここまで来たな。

頑張ったね、みゆ。

感謝だね、みゆ。

ありがとうね、みゆ。







昨日、学園祭で、みゆがダンスを踊った。


初めてバトンを持たずに踊った。


えりささんとゆっこさんと作った初めての作品。


『one~扉~』

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踊り終えたみゆがあたしの所に歩いてきた。





目が合った瞬間みゆが泣き崩れた。




それを見てあたしも泣いた。





『上手でした』


「うん」


『これで来週大丈夫』


「うん、大丈夫」


『頑張れよ、みゆ』


「はい、頑張ります」




何度も何度もよしよしした。


みゆはずっとずっと泣いていた。


みゆの涙を何度も何度も拭いてあげた。


あたしの涙はぼとぼとと床に落ちた。