なんか夢で玉ねぎ食ってる夢を見たのさ


すごく旨かったから(夢内で)、起きて買いに行って一玉食ったら気持ち悪くなった。


大事なのは現実だよね


って話。

男は、目が覚めた時自分がなぜ泣いているのかが分からなかった。



とても悲しい夢を見ていたような気がするのだが、頬を伝うものはなぜか陽の光のように暖かかった。

涙は次々に溢れ、喉からは嗚咽が漏れるほどであったが、彼はそれらに身を任せひとしきり泣いた。






ふと顔を上げると、カーテンの間から6月の淡い陽の光が差し込んでいた。

時計をみると10時40分。



「どっちにしろ」彼は思った。

「こんな顔じゃ学校なんて行けないしな」



・・・・学校?

頭の奥が微かに引きつる。




その時‘彼女’が入ってきた。

あまりに突然のことだったので、彼は危うく飛び上がりそうになった。





「おはようございます。・・・あらあら。 どうしたんですか?
そんなに目を腫らして・・・・  何か悲しい夢でも?」


彼は驚きと恥ずかしさのあまり、うつむいて黙り込んでしまった。

「お食事はここに置いておきますね。」

気を利かせてくれたのだろう。
彼女はいつものように食事を備え付けのテーブルに並べると、何も言わずそのまま部屋を出て行った。





「やれやれ。なにもこんなタイミングで入ってこなくても・・・。」



彼はそう思いながらも、皿に乗せられたパンに手を伸ばした。

基本的には彼女のことを気に入っているのだ。




いつものようにパンをゆっくりと咀嚼しながら、コーヒーをかき混ぜて冷ましていると、
ふとさっきの涙のことが気になってきた。

「まったく。こんな年になって嗚咽を漏らすほど泣くなんて・・・。

それにしても、いったいどんな夢を見ていたんだろう?」



だが、涙を流した後、不思議なほど心が安らいでいるのを彼は感じていた。





最後にこんなに涙を流したのはいつだったっけ?




・・・駄目だ。最近の事がまるで思い出せない。








唯一思い出せる記憶となると、小学生の頃にさかのぼる。


図工の時間、夢中で母親にプレゼントする版画を削っていた時、
勢い余って添えていた左手の指のつけ根を深く抉ってしまった。

その時もかなり泣いたが、何より怪我の為に版画のことが母親にばれてしまった時
母親に叱られるほどトイレに篭って泣き続けていたっけ・・・




幼い頃の思い出に、ふっと顔がほころぶ。



そしてその記憶を辿る様にしわだらけの手のひらを見つめる。

・・・・しわ?







「ああ、そうか。」



老人はその一瞬、全てを悟った。

夢の内容も。

涙の理由も。





彼は微笑み、

再び白濁していく意識に身を委ね、そっと目を閉じた。




陽光だけが、いつまでも変わらずに淡く揺れ、
老人をそっと包み込んでいた。
満足した愚者であるよりは
不満足なソクラテスでありたい。

何も考えない豚よりは
悩み続ける人間でありたい。


苦しみ続けることは俺が選んだことでもある。

無駄足ではなかった証拠もいくつかある。

頭を回して生きなければ
どこへ行っても
何を得ても
そこにどんな意味があるだろうか?

全て消えてしまうものだからこそ

それぞれの事象に
注意深く耳を傾ける必要がある

痛みを痛みとして実感する方が
快楽を快楽として実感するより
よっぽど大切なことなんだと
思い続ける

どんな奇麗事もいらねえよ

俺は俺の決めた事を宝石だと思って歩く。

俺の世界は俺のものだ。