「ぽんぽろと」と読みます。
この学校跡を訪問したのは昨年9月。
まだ9月だっていうのに、秋を通り越してしまったような寒々しさだった。
到着すると何よりも海の匂いを感じた。すぐ近くに太平洋があるということを知らされた。
釧路市で生まれ育った自分にはとても懐かしい匂いだった。
校門には学校名がしっかり残されていた。
知らない人が見れば「日曜日の学校」くらいにしか思えないだろう。
少し足を進めると長い雑草が足に絡まり歩きずらかった。廃校のイメージが次第に鮮明になってくる。
大きな丸い掘りがあった。
今まで廃校を見てきたが、このようなものは初めて見た。何に使われていたのだろう……
グラウンドに行ってみる。
校舎はまだまだ新しい。
グラウンドの雑草に違和感を感じる程である。
何の残骸だろうか?
この上でラジオ体操の模範でもしたのだろうか……
再利用の計画はないのだろうか……
それとも再利用する目的が無いのか?
学校の裏に回ってみると、浜中町立奔幌戸小中学校と書かれていた。
かつては中学校も近くにあったのだろう。
20分ほどいただろうか……
結局誰一人にも会わなかった……
人影さえ……動物も昆虫も……
全く「生命」に遭遇しなかった。
勿論、廃校に希望を求める事自体間違いだということは解っている。
ただ何か一縷の望みはどこの学校にもあるが、この廃校跡にはそれが何であるか答えはない……
そしていつもは耳を澄ませば子供たちの笑い声が聞こえるものだ。
この時ばかりは、それが聞こえなかった……
僕はここへ来て本当に良かったのだろうか?
自問自答する……
僕は廃校を巡る旅をしている中で、初めて後悔に似た暗鬱な気持ちになった……
日本の片隅で、北海道の東のはずれの小さな町で、また一つの学校が消えていった。
平成15年 浜中町立奔幌戸小学校廃校