先日ようやくピアニストの父、

森山輝生のCDアルバムが届きました。

 

 

自分はギター演奏から録音のミキシング、

マスターリング、CDプレスの手続き、

著作権の手続き、ジャケットのレイアウトや

デザインなど、殆どの制作プロセスに

携わったので、愛着と情熱を注いだ

その完成品が届いた時はひときわ

安堵感と感動は大きかった。

 

2月頃から始まったレコーディングの準備から

リハーサルも入れたら、完成までの制作期間4ヶ月。

 

そこまでの熱意を持ってこのアルバム制作に

エネルギーを注げたのには、いろんな思いがあるので

そこらへんをいろいろ綴ってみます。

 

 

父は約60年ほど、ここ北九州市を拠点に

ピアニストとして音楽活動を続けてきた。

 

まだキャバレーやクラブが全盛の時代

小倉の街も音楽が盛んで、大学時代は博多にいた

父は小倉の街の華やかさに憧れて

この街に移り住んできた。

 

当時バンドマンと言われるミュージシャン達は

北九州にも200〜300人はいたらしく、

そんなバンドマンの給料も普通のサラリーマンよりも

全然稼げてた時代だったと言う。

 

そんなオイシイ日本の高度経済成長期の絶頂の時に

カサブランカというお店を出し、ピアノと

バンドの演奏と映画を楽しみながらお酒を飲む

バーを経営していた。

 

自分も高校出る前くらいから週末はそこに飛び入りし、

まだギターリストとして駆け出しの時代に

北九州のジャズの大御所達と共演する機会に恵まれた。

 

80年代も終わる頃、父の友人で

九州でも有名なジャズベーシスト井島さんのソロアルバムに

父はメインピアニストとして参加することがあった。

 

自分もその時のレコーディングに立ち会ってて、

当時ドラムで参加した丹生さんのスティックを

手渡す役なんかで手伝ったりもした。

 

アルバムは結果的には父の満足のいく出来では

なかったし、自分もそのアルバムはいまいち

だと思ってた。

 

それは演奏内容という事もあるけど、

ミキシングやそう言った音響的なもの、

など総合的な完成度として。

 

それに加え、今はもう笑い話だけど、

友人支援のノーギャラだったこともあり、

父もずっとその当時のことを良くは

思っていなかった。

 

 

父はキャリアも長いのに、自分のアルバムを

作ったことはなかった。

 

それはきっとライブ中心にやってきて、

時間もタイミングも合わなかっただろうし、

一般的に音楽のレコーディングは

スタジオを借りて、プロのエンジニアを雇って

メンバーにギャラを払って、など

費用と採算を考えるとなかなか割りに合わないもの

だったからだろう。

 

 

一昨年のいつ頃だったかは覚えてないけど、

親父が買ったけど使い方がよくわからないらしく

録音機をくれた。

 

Zoomの24トラックの宅録機材で

その機械だけで録音編集できるものなんだけど、

近年自分はもっぱら宅録は2チャンネル以上は

使わないから自分の持ってる2チャンネルの

インターフェイスとパソコンのLogicで

音楽を作っていた。

 

それから時が経ち今年に入って父は

そのZoomのレコーダーでなんか

ソロアルバムできないかね、、と訊いてきた。

 

自分は宅録での音楽制作を長いことやってて

録った音を編集してアルバムにする作業は

慣れているから、機材的なクオリティーに

限界はあるかもしれないけど、

きっとなんとかなるだろうと

軽く返事をした。

 

アルバムの音楽を素晴らしくするのは

何十万、何百万もかけた機材や素晴らしい

スタジオなんかではなく、

はたまた有名人と共演することなんかでもなく、

結局はそこに注ぐミュージシャンの情熱と

創造性と愛だと思うから。

 

どうやら父は嫁さんのゆきえさんからも

おれに録音作業やってもらったらと促された

らしい。

 

なのでおれの力量を買ってくれたゆきえさんには

感謝したい。

 

そんなわけで、自分の今までソロアルバム制作で

培ってきた録音技術を初めて自分以外の人の

ソロアルバムで試すことになった。

 

 

父と音楽を一緒にやってみたいと思ったのは

自分がまだNYに住んでた2020年の終わり頃、

コロナで活動も制限されていた時期で

自分の音楽制作を続けている時に、

年齢的にも晩秋にさしかかる父ともまだ

作品を創ったことがなかったのが心残りで、

その時に、ニューヨークと北九州の間の

遠隔で音源を送り合って2曲ほど作品を

仕上げた。

 

そのうちの一曲はYouTubeにも載せています。

 

 

 

この時から父となにか残る作品ができれば、

と言う思いがあったので、今回のアルバム制作が

自分にとって魂のレベルでとても大きなプロジェクト

だったと思う。

 

レコーディングの企画が立ち上がってまもなく、

2月下旬に父は姉が沖縄に旅行に行った。

 

その際沖縄のパワースポットの御嶽に

行った翌朝、具合を悪くして脳梗塞で倒れた。

 

幸運にも姉がすぐに父のそばにいて救急車を呼び

病院に行って、早期発見だったので、翌日には

普通の意識状態に戻ることができた。

 

けれど、病院を退院する直前に今度は

胆石が発覚し、その手術は今日行われている。

 

ずっと元気でピアノを弾き続けてほしい、

と願う思いはもちろんあるけれど、

年齢とともに肉体的にいろんな溜まった

しこりやストレスが症状として出てくるのも

自然の摂理として受け入れる心の準備も

不可欠だと思う。

 

人は絶対的に死を経験するもので、

それを否定も拒否もできないから、

自分はそれを受け入れる覚悟を決めている。

 

死があるから生が尊く、美しく、愛おしいもの

だと思うから。

 

死を恐れたり否定するより、

今生きる喜びに情熱を注ぐことのほうが

魂は喜びを感じながら生を全うできるもの

だと思う。

 

今回のアルバム制作はそんな魂の情熱を

参加したメンバー全員が放った光なんだと思う。

 

おれたち一人ひとりがホタルの光のような

儚い命の生きる躍動。

 

父が脳梗塞から奇跡的に早期回復してしばらく経ち

録音したのは4月10日と11日の2日間。

 

録音した場所は門司赤煉瓦プレイス内にある

ライブ会場のブリックホール。

 

最近になってタイミングよくここにグランドピアノが

導入されたこともなにか天からお膳立てされてたような、

宇宙の采配のようなものを感じる。

 

この場所は関門海峡の海と風の流れが多い場所。

 

自分がここ北九州を拠点とする中で

人とのご縁やインスピレーションの核となっている

ようなこの場所で、録音できることは自分にとって

とても大きな意味がありました。

 

さて、アルバムの紹介になります。

 

アルバムのタイトルは

『Afterglow』

 

訳すと「残照」

 

昨年80歳を迎えた父自身の記念作品という

思いも込められたこの作品、

その年齢を超え、自身のスタンスで

ピアノを通じて輝き続けたいという

思いや、

本人の名前「輝生」の通り輝きを生きる

人生を全うする思いがこのアルバムタイトルに

込められています。

 

リーダー森山輝生自身のオリジナル3曲と

ジャズのナンバーを中心に全14曲の収録。

 

サイドメンは

ヴォーカル・レオノーラ

ベース・増根隆

ギター・森山修

 

今回、楽器の音の編集として一番気に入っているのは

増根さんのベースの音で

とてもクリアな低音のboomサウンドが心地いい。

 

自分が19才くらいの頃から共演してた増根さんも

バンドマン世代最後の人。

あらためてその熟練のサウンドに敬意を表します。

 

レオノーラさんも父とは40年来の付き合いで

フィリピン出身の大御所ヴォーカリスト。

収録曲「天国への扉」や「At Last」などの

ブルージーな曲で本領発揮。

 

またアップテンポのCheek to cheek や

Lady is a tramp、などでの軽快な歌声も

素晴らしい。

 

今回、自分のギター演奏はドラムレスという

こともあってアップビートの曲ではギターを

リズム楽器の役割としてジムホールの

4ビートストロークのように

スィングさせる事を意識していました。

 

父のピアノもスィングに上手く乗ってて

軽快なピアノタッチが心地いい。

 

圧巻はやはり「天国への扉」でレオノーラ

とのデュオでの情熱のピアノ演奏。

 

そして3つのオリジナル作品はどれも

素晴らしい楽曲なので是非聴いてほしい。

 

全体的にピアノの優しいタッチと激しさの

中に80年という生の年輪が刻まれた音を感じれる

父の存在がこの作品に現れています。

 

 

そしてジャケットの写真は

北九州が誇るフォトグラファー

木寺一路さんに撮っていただきました。

 

この関門海峡を挟んだ門司のプロムナードと

対岸の下関は父の生まれ育った土地。

 

そこから夕陽が沈んだ後の残照が

タイトルのアフターグローを象徴としてる。

 

 

 

 

裏表紙は湿板写真で撮られています。

明治時代とかに使われていたISO感度1という

古典カメラです。

 

この時は4秒くらいじっとしていなきゃならなかった。

 

 

 

ジャケット見開きのページ

 

 

 

 

さて気になるお値段は

 

税込価格2500円となっています。

 

興味のある方は是非お気軽に声をかけてください。

 

自分としてはこの作品に満足しています。

これだけの情熱と時間を費やした結果に何にも

悔いを残すことはありません。

 

メンバーそれぞれの持ち味を最大限に生かすための

音のバランスを何度も何度も吟味しながら

調整していきました。

 

だから歌、ピアノ、ベース、そしてギターの

一つ一つの音に自分のスピリットが込められています。

 

ミキシングから数えるともうすでに何百回と

聴いてきたけど飽きることのない音だと思います。

 

だから誰からなんと言われようと素晴らしい作品を

仕上げれた自分の魂を讃え労いたい気持ちで

最優秀アルバム賞を与えたい思いです。

 

きっと誰もそんなことを言ってくれる人も

いないでしょうから。

 

ただこの費やした情熱のエネルギーは

父への感謝の気持ちでもあります。

 

自分をミュージシャンとして息子として100%全力で

いつも絶え間なく応援してくれ、守ってくれた

愛情の恩返しでもあります。

 

アフターグロー(残照)は常に輝きを持って

生きることをそのピアノと音楽と存在を持って

教えてくれたその大きな愛に私の魂の情熱で

応えたドキュメントなのだと思います。

 

父の魂が永遠に輝いていますように✨

 

ではまた👋