ふとした時にでも空を眺めて欲しい。

時刻はそう、・・・・・・太陽が姿を潜ませ、月の支配下におかれた頃が良いだろうか。

晴れてさえいればそこに見える、満天に鏤められた宝石が。

光年という途方もない時を隔て、今に伝わる光。夜空の星を眺める恋人たち。ロマンチックな光景。

遥か彼方で。

命という灯火を燦然と奮わせ、星は語る。

伝わるはずのない想いであったとしても、何かを伝えたいと強く願う。

滅び行く己を強く強く具現し、光を飛ばし。滅び行く肉体に鞭を打ち。

何かを伝えんとする。

星は何を語るのだろうか?

それはもしかしたら、死の間際に眠る、星の最後の存在なのかもしれない。

それはもしかしたら、遠い過去という時間から翳り続けている世界の最後を、憂いているのかもしれない。

過ちを犯し、地球を汚染し、贖罪さえも無意味となりつつあるこの星はただただ、滅びの一部に過ぎない。こんな事は些細な事なのだと。

星は何を語るのだろうか。何を伝えんとしているのだろう。

夜空を眺める恋人たち。幸せで、そこには一片の不安さえない。それでいて脆いのは何故か。

刹那の時間。淡い気持ち。その末は?


ふと、電車の車窓から外に目を向けると。世界は夕陽に、ただただ静かに、抱かれていた。

少し眩し過ぎるくらいに輝き、そして夜。月に世界を委ねる。

世界はそんな風にして始まり、終わり、を繰り返す。静かに、時を紡ぎ、抱擁に全てを。

夕暮れ時はなんだか不思議な感覚に包まれる。世界の豹変を目前に、時の狭間をたゆたうような、そんな感覚。

陽が沈み、月が顔を現し、世界は漆黒に包まれ。

そこに燦然と煌めくネオン。数多の人、雑踏。華やぐ町、町、町。世界は豹変する。

そこに至るまでの、安定。夕暮れ時、世界は刹那の均衡を、映し出す。

無言の車内。ちらほらと見える人。単調な揺れ。車窓の光景。

全てが。ほんの些細な事。そこに意味を持つでもなく、ただ、ただ。

静かに、それでいて確かに。存在した。

何を信じ、人は生きるか?

家族? 友人? 恋人? 神様なんて人もいるだろう。

何かに縋り、生きている。何かを信じ、大切にし、人は苦行の世界を生き延びて往く。

では、信じたものに裏切られたら?

縋るものを見失った人は、どうする?

例えば家族。例えば友人。例えば恋人。神様とて公平でなく、危うく、脆い、存在。

所詮は自分とは異なる存在。結局は、自分だけ。

信じるべきものを見失った時、在るのは己という存在。信ずるべき存在は己のみ。

それが人間。社会という名の共存に在る、孤独。しかしどうだろう。

今、信じるものを失い、幾人が平静を保てるだろう。幾人が、己を確立出来るだろう。

社会とはそういうもの。一匹狼を飼い慣らし、忘れさせ、孤独を無感にさせる。

幾人が狼に還る事が出来るだろう。

全ては些細な事。刹那の幻。紛い物、歪に歪んだ、世界。

満月の夜、幾人が空に咆えるだろうか。