元気になって欲しかった
失うことに傷ついて恐れてばかりいる貴方に
前を向いていれば
いつか幸せもあるんだって知って欲しかった
私に出来ることならしてあげようとも思った

けど、私ができることってわずかなんだなって思う
だから、ごめんねって思う
恋人としてそばにいてあげれたらっても思うけど
今はそれは言えないから
貴方の想いを知っているのに
返してあげれなくてごめんって思う

こんな私を好きでいてくれてありがとう。

でも、こんな私でごめんなさい。



しかし・・・

机の上には封筒と紙切れがあった。

紙には「離婚届け」と書かれていた。

一緒に入っていた手紙には、

「今度再婚します。

 あなたとは違ってやさしい人です。

 二度と子供にはあわないでください。」

そう書いてあった。

慰謝料についても記載されていた。

あの夜はいったいなんだったんだろう。

共にすごしたクリスマス。

すでに彼女は再婚が決まっていた。

なんで期待なんかもたせたんだと・・・。そう考えながらも酒を手に取る。

真実を知るのは彼女のみ。

男は倒れていた。

友はそれを見つけ救急車で病院へと行った。

「急性アルコール中毒」だった。

翌月。彼は会社を売りに出し、数千万にもわたるすべてのお金を元妻に送り

派遣社員として仕事を始めていた。

「え?そんなことしたの??いなくなっちゃった奥さんにそんなにみつがなくても・・・」

そういった私に、彼は

「それでも、俺はあいつに感謝してるから・・・

 最後に俺に出来たのはこれだけさ・・・・。 」

うつむいて、そう呟いていた。

一人暮らしをするマンション。男はやつれた顔をしていた。

こんなことになるはずじゃなかった。

「戻ってきて欲しい」何度そう願っただろう。

彼女が子供をつれ家を出たのはもう半年前だ。

最初は、きっとすぐ戻ってくる。そう思っていた。

しかし一ヶ月しても戻って来なかった。

分かっている。悪かったのは俺だ。

両親にめぐまれなかった俺はとにかく荒れていた。

いろいろ悪いこともした。

そんな俺をいつもそばで見ていてくれ、まっとうな道に戻してくれたのは

ひとえに彼女のおかげだと思う。

そんな俺が二十歳で結婚し、会社を立ち上げたのは数年前。

とにかく忙しかった。家に帰る日もないほど。

いつしか妻のことなど考えなくなっていった。

接待と称してキャバクラに通うことも多くなり、浮気も数え切れないくらいした。

それも仕事という名目をつけて。

手に入るお金が増えると同時に女性も増えた。

自業自得といわれればそうなのかもしれない。

だが、当時はお金を稼ぐことが幸せにつながると信じていた。

誕生日のお祝いを一緒にしたのはいつのことだったのだろう・・・。

そんな俺を見限られるのは当然のことだったと今ではいえる。

でも、あの時はそれがすべて正しいことに見えたんだ。

いつしか帰宅しても部屋の明かりはついていなかった・・・。

一度離れてしまった心は再び一緒に暮らせることもなく、今に至る。

そんな俺に、先週 別居中の妻より連絡があった。

「クリスマスは一緒にお祝いしない?」

思わずチャットのみんなに自慢した。

みんな手放しで喜んでくれた。

俺もとっても幸せだった。きっと時間は戻ると信じて。

今度こそ間違えない道を二人で・・・

いや、子供を含めて三人で進むんだ!

残念ながら子供は一緒ではなかったが、二人でクリスマスを祝った。

ひさびさに心が通ったかと思う夜だった。

豪勢な食事。そして一緒に泊まった。

同じベッドの上で熱い夜を過ごした。

もう二度と話さないと心に誓った。

時は戻るはずだと信じていた。


暗い部屋に一人男がうずくまる

部屋には酒とタバコの臭いが立ち込めていて

空気は、むぁ~っとしている。

部屋を照らすのはパソコンの明かりのみ。

画面にはせわしなく会話を続けるチャット画面が開いていた。

ごめん・・・

ごめんよぅ・・・

戻ってきてくれよ・・・

男は静かに泣いていた。

もう戻らない人を思っていた・・・。

・・・・。

男は横においてあった1リットルの日本酒の紙パックに手をのばした。

コップに注ぐのも面倒とばかりに、直接一気に飲み干す。

そしてパソコンを見つめた

おいっすー。

酒はいいぞー。うまいぞー。お前も飲めー♪

心の悲しみを隠すように楽しそうな口調

少しだけ不自然に、でも初めて見る人にはわからないくらいの些細な違い。

おそらく誰かにわかって欲しくて、でも素直に言うのは抵抗があって。

何やってんだよー

また今日も飲んでるの?

飲みすぎに注意してねー

俺も飲むぞ

人の反応がかすかにうれしい。

キーボードを投げ捨てると、そのまま布団の上に倒れこむ。

目元には涙が浮かんでいた。

その日、それ以上チャットに現れなかった。