ミスタープラトニック。
今日は昼から岸和田ら辺にあるスタジオで、前原プラトニック淳平のレコーディングの手伝い。彼の弾き語りの曲に俺がスライドギターを入れるのだ。
遂に俺もギタリストデビューなのだ。スライドギタリスト。北野田のグレッグ・オールマンと呼ばれた俺だが、今では山崎のデュアン・オールマンも兼任しておる。
意気揚々とレコーディングブースへ。直前、前原君から「ブラックコーヒー、っていうより、カフェオレ、みたいなイメージで。」との要望を受けたが、意味が解らんので無視。そんなふわっとしたリクエストで完璧に御期待に沿える俺ならば、こんな所におるか。
しかし結構練習もしたし、これ一発OKちゃうか?なんて調子に乗りつつ、念の為、何度か試し録りしているうちに、どんどん雲行きが怪しくなっていく。程なく集中力が途切れ、今まで難なくこなしていたフレーズまでつまりだす。あれ?この指で合ってたっけ?あれ?譜面見てるのにあれ?この状態を"ハマる"という。
激ハマり。4分程の曲を、2時間以上録り直し続ける。俺、余りに下手糞である。
失敗する度に「とほほ」という言葉が口から物質となって零れ落ち、床で砕け散って錆び色の砂塵と化す。
漸く録り終えた頃にはパンツの中まで砂塗れで、おちんちんが川通り餅みてぇになっていた。
すまぬ、時間を食ってしまった。俺が録り終え、次は前原君がコーラス録音。
前原、苦戦。さっきまで俺がハマり倒していたせいもあるが、人がハマっているのを見るのは、心の底から楽しい。ニコニコしながら応援。ここに一升瓶があったならば、この他に何の肴も要らんであろう。
ブースから這い出して来た前原淳平は、パンツの中まで砂塗れで、きんたまが安倍川餅みてぇになっていた。
名盤の予感、だ。

