不自由アンセム | 津々浦々を徒然と行く。

津々浦々を徒然と行く。

まあ、色々と。色々と。

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店員が困ってる。

閉店だというのに、くつろぐ客に困ってる。


ああ、この客は自分勝手なほど自由なんだ。




この客は自由だけど自由じゃない。
この椅子、このテーブル、その形の中でくつろぐにはこの方法しかないのだから

この形状に縛られたリラックスをただ堪能しているだけなのだ。

そのうえ、「俺の勝手だ!」と怒鳴りあげる。



勝手にやりたい放題しないと、「自分の勝手」と思えないなんて、かわいそうだ。



それを面白がって絵が趣味の店長が、スケッチする。
「ラフスケッチだよ」と、高いところから「お前らを描くか描かないかは俺の自由さ」と笑う。



僕ら2人がいなかったら、君は描く対象をなくしてしまうというのに、「俺が一番自由だ」と笑う。
この客のせいで、店員はシフト通りにあがれない。

そうしたら店の戸締りも遅れて「早く帰らなきゃ嫁に怒られる!」と愚痴るくせに。





はたして本当に自由なのは誰なのだろう。




誰かの人生が誰かの人生にくさびのように深く食い込む。




ありきたりな日常に眠る、不自由アンセム。




人生に於いて些細である
この不条理劇を愛せよ。