カッパーベルで救出された190人の内43人は身寄りもない子供だった。そんな状況を憂いてか一人の少女が立ち上がる。彼女は昔から貯めていたお金をその子供達に使おうとしたのだ。デュラ家の支援もあり子供達の学校が作られる事になった。
名前はチキンスクール(ひよこの学校)である。まだ何処に作られるか未定だがナル・ザル教団の協力により教団本部にある空きスペースを学校が出来るまで使わせてもらえる事になった。
ナル・ザル教団、砂蠍衆の一人デュララ・デュラを最高指導者に置く教会みたいな組織。聡明温厚な彼女は聖女とも呼ばれているらしい。
だが世間はそんなに甘くはない、支援をするには条件があったのだ。ウルダハでは新たな事件が起こり、それに悩まされていたのである。そう条件と言うのが新たな事件の調査・解決であった。
白い生き物とピンク髪ミコッテは新たな事件を担当している不滅隊古代神学を究めていると言われる女性に会いに来ていた。黒い鎧男とララフェルの少女も誘ったのだが忙しいみたいで断られてしまった。
ララフェルの少女が忙しいのは新たな学校を作ったのは分かるが黒い鎧男はウルダハの美味しい物巡りをすると言って駆け足で行ってしまったらしい。
呪術師ギルドの横に古代神学の研究所があった。扉をノックするとハーイと声と共に入っていいですよと言われる。入ると山積みの本に対応されるという不思議な体験にびっくりしてしまった。入ると色々な本が散らばって足の踏み場が無かった。
本の影から眼鏡を掛けている小さい少女が出迎えてくれる。彼女がどうやらデュララ・デュラ様の姪っ子でこの研究所の主みたいだ。ララフェルの少女は会釈をし自己紹介をする。
「ミヒロ・デュラと言いますわ。今回雪だるまさん達を呼んだのは東ザナラーン眠り事件の調査を一緒に進めていただきたくお呼びしたんですの」
東ザナラーン眠り事件とはある日を境に住人が目覚めないという事が起こっていた。最初は一人や二人だったのであまり騒がれなかったが今はもう8割の生物が眠りに落ちている事から東ザナラーンの道は閉鎖し隔離状態になっていた。
ウルダハ政府も対応をし5部隊40人を調査の為、派遣したが誰も戻っては来なかったらしい。だがそれと古代神学は何の関係があるだろうと二人は首を傾げてしまった。
「お二人は色々な神がいるのはご存知かしら?最近も蛮神が召喚された話もあったでしょう」
最近アマルジャ族が蛮神イフリートを召喚した話は有名だった。世界各地には色々な神がいる。ピンク髪ミコッテと白い生き物は頷き女性の話を聞き続ける。
「私が研究をしている本の一人に世界を眠りに落とそうとした神がいるの夢の王モルペリウス一部のキキルン族が信奉している神よ」
それじゃもしかすると東ザナラーンに住んでいるキキルン族が蛮神召喚をしたというのだろうか。ピンク髪ミコッテは気になったのか他の神も聞いてみる。
「他にもたくさんの神っているもんなんですか?」
眼鏡をかけたララフェルの少女は頷き話し続ける。
「最近みた文献だと月世界を滅ぼした神ヘカテーや雷の王トールかしらね。まあ仮説に近いんだけどね。12神だって私達は何も知らずに信奉しているけど、それが神降ろしに繋がるかもしれないわ。最近嫌な噂も聞きますの」
ヘカテーと聞いて白い生き物は頭の奥がズキンと痛んだ気がした。何故だろうその名前を知っているような気がする。嫌な噂って何だろう白い生き物は尋ねてみようと思った。
「嫌な噂ってどんなものなんですか?」
ミヒロ・デュラは困惑した顔になりながらその噂を話し始める。
「ブラッククリスタルという物が出回っているらしいんですの」
ブラッククリスタル?黒色の水晶かどんな物なんだろか。名前の響きに嫌な予感をしつつ二人はミヒロの話を聞き続ける。
「自分の命を依代にブラッククリスタルの力で信奉している神を降ろす事が出来るというものですの。普通の蛮神よりは力が落ちるらしいけど神には違いないからその噂が本当なら?もしそれが東ザナラーンに関係があるなら?」
蛮神関係の話にピンク髪ミコッテは恐怖の顔になる。何でそんなに怯えているのか隣の白い生き物は訪ねてみる事にした。
「ふうたんさん大丈夫?何でそこまで怯えているんですか?」
「雪だるまさん聞いたこと無いんですか?蛮神は敵味方かかわらず自分の祝福を掛けるんです。すると掛けられた者はその神の言う事しか聞かなくなる洗脳状態になるんです。俗に言うテンパードという状態です」
雪だるまは首を傾げ考える洗脳されたら術を解けばいいんじゃないだろうか。安易な考えをすると追い討ちをかけるように暗い顔をしながら小さいララフェルが話し出す。
「いまだにテンパードを解く術は無いんですわ。テンパードになった者は処分するのが今現状のやり方ですの」
衝撃の真実に雪だるまは言葉を失う。そうふうたんが焦った理由が分かった。この案件は思ったよりかなり危ないものなんじゃいかと白い生き物はミヒロと呼ばれた少女に断ろうと立ち上がるが小さいララフェルが一言付け加える。
「今回の召喚された蛮神は祝福を出す事が出来ないらしいですわ。だから雪だるまさん達に調査をお願いする為に呼んだんですの。お願いします。どうか私に力を貸してください!!」
ミヒロさんの話によると今回の蛮神は祝福が使えないらしい。噂で聞いた話らしいので信憑性はない。膝を折ってお願いする少女のお願いをノーと言えない雪だるまは渋々だが了承する事にした。
雪だるまは胃が重かった。二人にまだ相談していないのに勝手に決めてしまった事に丁度屋台から食べ物を持った黒い鎧男に話しかけられる。
「あれふうたんと雪だるまじゃん。話は終わったんか?」
のん気に黒い鎧男は屋台の食べ物を食べていると溜息を付きながらふうたんがダークに説明し出す。黒い鎧男は急いで手に持ってた食べ物を食べると、また新たな冒険か楽しみだなあと言い出す。
「とりあえず今度は何処に行くんや?」
「はぁダークさんには緊張感が足りないですね……。私達が担当する事件は東ザナラーンの一件です」
東ザナラーンの単語を聞くと黒い鎧男は喜び出し新たに買った両手剣を磨きだす。そんなに嬉しいのか戦闘狂なのだろうかと二人はそんな事を思ってしまう。
黒い鎧男は行くだろうと思っていたのでそんなに心配してはいなかったが問題は小学校を作ったララフェルの少女である。一緒に行ってくれるだろうか。
ナル・ザル教団の空きスペースにある扉をコンコンと叩くと元気のいい女の子5人が出迎えてくれていた。
「うわーー、大きなぬいぐるみだ!!ひよこお姉ちゃんこれ私達のプレゼント?」
元気のいい少女が僕の事を指差しひよこちゃんと呼ばれた少女に尋ねるとララフェルの少女は首を横に振る。
「この子は雪だるまちゃん私の友達だよ。ウパちゃん、お姉ちゃん大事な話があるからまくまちゃん達と遊んできてくれる?」
ウパちゃんと呼ばれた少女はまくまちゃんと呼ばれた少女の元に行き5人の少女は仲良く遊び始める。というかかなり子供が多い今現在チキンスクールには50人の孤児が暮らしているらしい。あの助け出した男の子8人も元気に遊んでいるところを見ると何か微笑ましい。
雪だるまは先程聞いた話をひよこちゃんにすると、小さい少女は荷物をすぐに纏め旅支度をする。
「うん、待ってて準備するね!!」
ひよこちゃんは片腕がない修道服の女性に事情を説明してうぱちゃんやまくまちゃんの事を抱き締めると白い生き物の腕を引っ張って東ザナラーンに向かおうとする。
「雪だるまちゃん行こう!!早く解決しちゃおう」
雪だるまはひよこちゃんをまた巻き込んでしまう事を心配したがそんな心配はいらなかったみたいだった。場所は変わり東部森林では今日も素敵な結婚式が十二神大聖堂で行われていた。
そんな風景を憎悪の顔で見ている男がいた。男は今日結婚する女性のストーカーだったのだ。そんな憎悪のパワーを感じたのか男の後ろには黒い衣を被った男性が現れていた。
まさむね鯖で出会った素敵なお友達をまたキャラクターにしてみました。とりあえず子供達の話は後々書いていけたらいいなあと思っています。
みひろちゃんは出会った時、聡明そうだったので考古学者さんにしてみました。
次回は東ザナラーン眠り事件の調査を開始します。