詩集はしがき
數奇なるはわがうたの運命なるかな。かつては人に泣かれしものを、いまは世に喜ばるるとぞ。しかも評家は指ざし嗤ひて餘技なるのみといふ。或ひは然らむ。魯なるわれは餘技なるもののために命をささげ来にけらし、志してより二十年のこの朝夕を。かくてわが青春のかたみにと一巻の歌ぐさぞ纔かにわれにのこりたる。……


夕づつを見て 佐藤春夫

きよく
かがやかに
たかく
ただひとりに
なんぢ
星のごとく

 (殉情詩集「幼き歌」より)