キウイγは時計仕掛け (講談社ノベルス)/講談社

2014年、26冊目。森博嗣『キウイγは時計仕掛け』

 

Gシリーズの9作目。

箱根で開催される日本建築学会の会場となった日本科学大学で発生した殺人事件と事件に絡む”γ”が記されたキウイを巡る話。

 

 

箱根の日本科学大学で開催される日本建築学会で発表することとなる山吹早月の論文の共著者として加部谷恵美も箱根へ向かう。

同行するのは取材を兼ねた雨宮純。

発表を前に緊張する恵美とは対照的に純はいつものとおり気楽なもの。

学会を前に、会場となる日本科学大学に不審な荷物が届けられる。

中身は爆弾を模したかのように、キウイに缶ジュースのプルトップをくっつけたもの。

キウイの表面には見えにくいものの”γ”の文字が・・・。

学会の準備委員長を務める蔵本寛子教授は警察に相談するが、警察としても事件として捜査するほどの材料もない。

学会にはW大学准教授の西之園萌絵やW大学大学院生の海月及介、N大学准教授犀川創平、C大学准教授国枝桃子もやってくる。

犀川は学会の前に開かれる研究委員会で蔵本から不審なキウイの話を聞いたあと、公安の沓掛から日本科学大学で2年前にハッキング事件があったとの情報に接する。

ハッキング事件の関係者として目された島田文子は真賀田四季とも接点のある人物。

犀川は情報工学科の助教である文子を訪ねる。

 

学会が開かれる前夜十時過ぎ、理事長室を訪ねた後、蔵本は学長の福川啓司と面談するが、その最中、部屋に押し入ってきた顔を黒い布で隠した男は、キウイを爆弾と称して二人に示して威嚇した。

男に近づき、蔵本を庇おうとした福川だったが、男に拳銃で撃たれてしまう。

 

防犯カメラの映像に男の凶行が録画されていたものの、警察の捜査の甲斐なく、犯人は見つからない。

そんな状況のなか、やや予定変更がありつつも恙なく、学会は開会される。

緊張のあまり寝過ごした加部谷恵美の発表も無事終わるが、少しずつ情報が流れ出し、マスコミの一員として俄然雨宮純はりきり、恵美も発表を終えた解放感から事件に強く感心を持つ。

山吹や萌絵はいつものとおりの反応だ。

”γ”の記されたキウイ。

事件は真賀田四季と関係があるのか。

沓掛も現場に現れ、犀川や萌絵と合流する。その矢先、蔵本寛子が殺害されているのが発見される。

凶器は福川を殺害したのと同じ拳銃と思われた。

しかし、蔵本の部屋の防犯カメラはなぜか、その時刻撮影されていなかった。

思い思いの推理を開陳するなかで、相変わらず醒めた海月の発言は蔵本の自殺を示唆する。

事件の関係者として浮かび上がってきたのは、蔵本の研究室に属するインドネシアからの留学生スマリ。

彼は蔵本の実の息子だった。

スマリに取材する純だったが、そこへ警察が現れる。

ナイフを掴んだスマリは純を人質にとって・・・。

 

 

雨宮純の名古屋弁が絶好調。

解説など一切ないので、ここまでキツイと他の地方の人には全くわからないフレーズも多いだろう。

”もうはい” とか”だに”とか、すごく懐かしい言葉使いだけれど・・・。

あとは文章ではイントネーションが伝わらないのが残念。かなり特殊(?)な抑揚で喋っているはずなんだろうけれど、それが頭のなかで再構成されないと、この雨宮純の台詞の面白さが半減という感じかもしれない。

 

とかいうように、このシリーズ、最後まで事件の解決は二の次という感じになってしまっている。

不可解なギリシア文字事件なんだろうけれど、結局のところ真賀田四季との関係性は”?”のまま放置。

事件の真相自体も置き去りだ。

奇妙な事件が背景にありながらも、そこへ深く切り込むこともなく、主人公らも傍観者的な立ち位置でいろいろコメントしているだけになってきている。

この作品のなかで西之園萌絵や犀川創平が触れているが、かつての事件への取り組み方と最近(の作品)では大いに変わってきているということだろう。

ただ、その意味で最近の作品が面白くなっているのかといえば、どうだろう。

やはり、もっとベタな昔の作品の方が個人的には面白かった印象が拭えない。

Vシリーズなんかは本当に面白かった。

このシリーズもあと3作。

どうなっていくんだろうか。

 

お奨め度:★★☆☆☆

再読推奨:★☆☆☆☆