河原町ルヴォワール (講談社BOX)[本/雑誌] / 円居挽/著

2014年、23冊目。円居挽『河原町ルヴォワール』

 

シリーズ最終巻。

のっけから主要登場人物の龍樹落花が弟大和に殺され、それを巡っての双龍会という展開。

更に、京都を影で牛耳る青蓮院、黄昏卿への挑戦も合わさってシリーズ最後に相応しいエンターテインメント作品になっている。

 
 

台風のなか、弟大和からの呼び出しを受けて鴨川デルタに赴いた達樹落花は大和に突き落とされ、濁流に呑みこまれる。

間もなく落花の遺体が発見され、妹撫子は消沈する。

落花が大和に突き落とされたところを目撃した𤭖賀流は、その証言をするが、青蓮院門下にある大和の所業は黄昏卿の現実改変の力により有耶無耶にされてしまう。


落花の葬儀に現れた天親寅彦はこの件につき双龍会を催すのであれば、京都御所の臥虎の間、蔵竜の間を予約したと告げ、龍樹家の対応を促す。

流と御堂達也は撫子の奮起を促すが、落花を失くしたことの衝撃や、その犯人と目される兄大和、そして先日、自身の目の前から姿を消し、青蓮院に入ってしまった城坂論語のことに思い煩うだけで、双龍会の決断を下せない。

撫子の決断を待つなか、達也と流はそれぞれ調査にあたる。

ささめきの山月から落花が罹っていたかもしれないという落龍疫という病を耳にした達也。

城坂論語が撫子と出会うこととなった一件の前に発生した論語が襲われたという事件の顛末を知った流。

二人が偶然、次に足を運んだのは、論語の祖父城坂慈恩が論語のために用意したという病院、サントアリオ病院。

そこで、ノックスマンと名乗る院長我鷹尊の話を聞いた二人は、千年を生きるという黄昏卿に係る秘密をあらためて知る。


論語の秘められた過去を知った流は、撫子にそれを告げ、撫子に双龍会の開催に踏み切らせる。

京都御所蔵竜の間で始まった双龍会は、火帝黄昏卿、黄龍師龍樹撫子、青龍師城坂論語、御贖龍樹大和で始まった。


当日の模様を録音した携帯電話のデータや鳥官𤭖賀流の証言から大和を追い詰めようという撫子だったが、論語は軽々とその上をいった。

賀茂川と高野川の両方に、それぞれ土嚢が積まれ、濁流を生むための下準備がなされていたという事実が示される。

賀茂川は青蓮院側が、そして高野川は落花が虚空坊犀義一に依頼していたものだった。

 

論語は高野川の堰により落花は死ぬことになった、即ち自業自得であったと主張するが、それに異論を唱えたのは御贖龍樹大和だった。

大和は敢えて賀茂川説を採っても、この双龍会に勝てると主張し、不利な賀茂川説を展開しようとする。

混乱する撫子を前に、論語と大和の二人は、いずれの主張を容れるか、即ち、青龍師にどちらを就かせるかの決断を撫子に委ねる。

 

前半戦を終え、悩んだ挙句に撫子は城坂論語を青龍師に選ぶ。

この双龍会は、城坂論語が龍樹家の敵であることを浮かび上がらせるとともに、論語の存在、そして祖父慈恩との関係性を問う展開となっていく。

そして・・・。


一方、もう一つの選択肢、撫子が龍樹大和を青龍師に選ぶ選択肢も描かれる。

犯行場所を鴨川デルタではないと主張する撫子は清廉門院での犯行を仄めかし、清廉門院黄昏卿に牙を剥く。

当初こそ受け流してきた黄昏卿だったが、御堂達也の登場により思わぬ方向に話は展開していく。

そして達也が主張した黄昏卿の正体とは・・・。

  

 

 

非常に読みにくいシリーズだったが、ようやく慣れてきたところで終りとは肩透かし。

登場人物の魅力が少ないところが玉に瑕。

こういった作品でなら普通のテンションの𤭖賀流が妙に浮いてしまうくらい、キャラクターがみんな醒めているところが、話に入り込みにくい遠因か。

ただ、今回はそんな登場人物云々よりもストーリーの急展開がうまく没入させる仕組みになっている。

龍樹落花の死という、ちょっと想定外の出来事が、嘘偽りが常套手段のこのシリーズでも、厳然たる事実として語られるため、いきなりクライマックス感が漂う。

更に、城坂論語の過去を巡る話。

ここはやや荒唐無稽というか、やや行き過ぎの感はあるものの、まぁ許容範囲か。

あとは、城坂論語Vs龍樹撫子の双龍会、そして龍樹大和Vs龍樹撫子の双龍会という二つの可能性が同時に語られることが意表を衝かれた。

天親寅彦の言葉から予想できたはずではあるが、まんまと引っかかってしまった。

それにしても、最終巻だけあって、内容が盛りだくさんというか、これまでの作品が淡々としていただけに、物量に圧倒された感が強い。

 

 

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★☆☆☆