- ログ・ホライズン7 供贄の黄金/エンターブレイン
2014年、22冊目。橙乃ままれ『ログ・ホライズン 7 供贄の黄金』
シリーズ7作目。
ゲームシステムの裏側を握る種族との交渉をめぐるシロエの話。
アキバを離れたシロエと直継は<大地人>魔術師リ=ガンとともに、銀行など幅広く世界のシステムを運営する供贄一族の里とされる北に向かう。
シロエらと応対したのはアキバの菫星。
シロエが申し入れる多額の融資に対し、菫星は太祖の約定をたてに拒否する。
これに対し、シロエはこの世界の金貨配分の仕組みに係る推理を示すが、まさにそれこそが供贄一族の秘密であることを明かすかのように、菫星はシロエへの敵意を示す。
この世界の金貨が生まれる場所へ向かうべく、シロエは仲間を募ろうとするが、ミナミの監視の目は厳しく、アキバでの行動は制限される。
止む無く、シロエはアキバから拠点をススキノに移した<シルバーソード>のギルドマスター、ウィリアム=マサチューセッツに協力を依頼する。
比較的容易に肯うウィリアムだったが、シルバーソードでは引退した者も多くなっており、レイドメンバーが不足する。
これに加わったのはシロエに因縁を持つ<ブリガンティア>のデミクァスと、直継が見つけてきた陽気な施療神官てとら。
<パルムの深き場所>の深部に発見された新たなレイドゾーンに向かった彼らは、当初の予想以上に複雑な構造のため、攻略に疲弊し、一方で倦怠感も現れていた。
そんななか、新たなレイドボスを攻略中のメンバーはその最中、第二のレイドボス、第三のレイドボスに同時に攻撃され、あっという間に全滅してしまう。
ボス同士が共闘してしまえば、最早勝つ見込みは全くない。
ウィリアムは絶望し、自身の情けなさを吐露するが、メンバーはそれで幻滅することはなかった。
一方、シロエは死から再生にかけてのひととき、自身が記憶を捨てる瞬間を知覚するとともに、自身がテストサーバー<静かの海>にいることを知る。
なぜか、そこでアカツキと邂逅し、アキバで頑張るアカツキの姿勢に、自身の頑なだった気持ちが絆される。
あらためてウィリアムと共闘したシロエは、十分な準備を経て、攻略に臨む。
作戦通りといかない部分も多々ありながらも、メンバーの勇戦、奮戦が続く。
デミクァスもまたシロエに反感を持ちながらも、シロエとともにゾーン攻略に駆け回る。
全てのメンバーに導かれ、シロエは一人、最深部に辿り着くと、そこは金貨の溢れる庭園。
出迎えた菫星(必ずしも同一人ならず)は決して歓迎しないものの、太祖の言葉に従い、真実を語る。
シロエはあらためて自身の思い、ヤマトにおける土地(ゾーン)保有に係る危機感を語ると、アキバ市街全般の権利をヤマトサーバーに永遠に譲渡することを告げる。
更に、ヤマト全土におけるゾーンを、この庭園に有する金貨の融資で贖ったうえで、それをあらためてヤマトサーバーに譲渡することを告げ、ヤマトにおけるソーン購入システムの廃止を申し入れるのだった。
一方、<七つ滝城塞>の攻略を前にしたクラスティらは、緑小鬼らが戦闘訓練をしていたと思われる痕跡を発見する。
これまでとは様相を異にする決戦を前に緊張を強いられる彼らの前に、高山の軍用大鎌が異様な光彩を放つと、クラスティを巻き込み消失してしまう。
少しずつ枝葉末節に入ってきているような気がしないでもない展開。
ゲームの世界を実世界と捉えた場合に、システムを運営する仕組みが存在するのは確かにそうなんだろうけれど、それを言い出すときりがないというか、矛盾に全て理屈をイチイチつけていると肩が凝ってしまいそう。
言われりゃ、そのとおりという設定に対する疑問ではあるけれど、ややストーリー的には小休止の感はあるのだろうか。
といっても、この話は最終的にはどこへ向かっているのか、はっきりとはしないけれど・・・。
単純には、現実世界に帰還することをもってエンディングとするのかもしれないけれど、そのわりにはこの仮想世界のキャラクターの肉付けが重い。
逆に、帰還後の仮想世界の存在感をそのままとするために、妙にディテールや骨格、世界の成り立ちにこだわるのかもしれない。
まぁ、そういった展開の難渋さを抜きにすれば、謎あり、バトルあり、友情(?)あり、と趣向を凝らしたストーリーなのかもしれない。
個人的にはあんまりスッキリしないが・・・。
むしろ、次回に引っ張った消えたクラスティの謎の方が印象的だ。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★★☆☆