2012年、101冊目。荒木源 『探検隊の栄光』
いわゆる「川口浩探検隊」へのオマージュ作品。
人気番組「杉崎探検隊」の一行はジャングルを進んでいた。
隊長の元プロ野球選手杉崎正雄のほか、プロデューサーの井坂善三、構成作家の水島啓介、ディレクター瀬川学、AD赤田康弘、更に、下請けの製作会社のカメラマン橋本政明、照明の渡部繁の7人だ。
事前に調査を行ったジャングルは何ほどのことはない。
今回も事前に現地スタッフが提案した洞窟に潜り込んだ。
しかし、そこで人形の紙を撃ったと思しき銃の弾痕と薬莢が見つかると、現地スタッフらはそそくさと洞窟を後にし、村へと戻ってしまう。
仕方なく、洞窟に残された一行は用意された蛇をつかって、蛇神”ヤーガ”をテーマとした撮影を始める。
しかし、彼らはこのあたりに進出しようとする反政府ゲリラの先行部隊3人に捕まってしまう。
杉崎らを日本政府に身代金を要求するための人質とすることを決めた反政府ゲリラの3人(ミゲル、カルロス、レイ)だが、本隊が到着し、最寄の村を占拠するまでは洞窟に逼塞することを告げる。
いつになれば日本に帰れるかわからない中で、杉崎はミゲルらに交渉し、撮影の再開を嘆願するとともに、現地住民に扮して出演することまで求めるのだった。
富裕な家に育ちテレビへの関心も高いカルロスが乗り気になったことで、ゲリラも交えて、撮影が再開される。
あまりの馬鹿馬鹿しさに内心、閉口していたミゲルだったが、その一方で直向きに撮影に取り組む杉崎らの姿に、見方を変えていくのだった。
少しずつ結束し、撮影は進み、見事にクライマックスである”ヤーガ”の撮影にも成功し、心は一つになる。
しかし、そんな矢先、蛇獲りの息子トニーが現れたことで、事態は少しずつ変わり始める。
探検隊が使用しなかった蛇の回収を求めるトニーに肯う一行だったが、”ヤーガ”撮影のために金色に着色したからか、蛇が死にかけていたのだ。
約束違反を詰るトニーは撮影済のテープを火にくべてしまい、クライマックスシーンは喪失してしまう。
蛇の回復もないままに途方に暮れる探検隊だったが、そんな矢先、反政府ゲリラ本隊と思いきや、政府の部隊が秘かに洞窟に近づいていた。
これを手前でキャッチしたレイは、ミゲルやカルロスとともに反撃に出る。
しかし、多勢に無勢で敗色の濃いなか、杉崎らに迷惑をかけるまいと、洞窟から遠ざかろうとする。
それを知った杉崎らの決断は・・・。
やや陳腐といえなくともないが、エンターテインメント作品らしい作品。
そういえば、川口浩探検隊シリーズ自体がそうだったのかもしれない。やらせの良し悪しではなくて、それも込みにして視聴者を引き付ける魅力があった。
そんな魅力を現地の反政府ゲリラの目を通して訴える手法は面白い。
兵士たちとの共感などはお約束的な部分はあるものの、話に入り込みやすく、感情移入しがちになる。
ラストは若干蛇足の気味もないではないが、いつの間にかお茶の間から消えていった川口浩探検隊シリーズの寂しさを思わせる、なんだかしんみりした終わり方。
これはこれで悪くはない終わり方なのかもしれない。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★★☆☆