Masuyama2014年、冊目。誉田哲也 『増山超能力師事務所』


超能力者が世に認められた社会。超能力を活かした探偵のような仕事「超能力師」の集う事務所のメンバーが遭遇する事件簿。





Chapter1 初仕事はゴムの味



二級超能力師に合格した高原篤志の初仕事は浮気の調査。



依頼人の夫のあとをつけた高原は、男の入っていったアパートのドアノブから男の想像する女性の姿を読み取って・・・。






Chapter2 忘れがたきは少女の瞳



目つきが悪く、不細工な中井健は人の感情を読み取る自身の能力を持て余していたが、超能力師の資格が確立するなかで、増山超能力師事務所に身を寄せる。



家出した娘の捜索を依頼された中井は、娘の持ち物から母に向けた悲しみを感じ取るとともに、娘が超能力を有する可能性を感じるが・・・。






Chapter3 愛すべきは男の見栄



増山超能力事務所に就職希望者が現れ、事務所が揺れるなか、同僚の捜索という依頼に増山は一人でこれを担当する。



増山が河原崎晃と事務所を立ち上げて1年で事務所スタッフとなった大谷津朋江は増山の気持ちがわかっていた。



無理する増山を窘めつつも・・・。






Chapter4 侮れないのは女の勘



増山を訪ねてきた警視庁の刑事榎本克己を応対した住吉悦子は、榎本から変死体についての相談を受ける。



超能力の存在を示すDM値の高かった死体が持っていた子ども向けのマスコットから記憶を読み取った悦子は、新たに入所した宇川明美とともに現場に向かった。






Chapter5 心霊現象は飯のタネ



容姿端麗ながらなぜか女性にモテない河原崎晃はポルターガイストの相談に訪れた依頼人藤宮亜澄に一目惚れする。



調査の結果、妹千秋に超能力の疑いを向けるが、成長してからの超能力発現の事例は殆どなく、かつて同様の「井山文乃事件」を扱った増山に相談を持ちかける河原崎だったが・・・。






Chapter6 面倒くさいのは同性の嫉妬



半陰陽であり、超能力を有することも知っている幼馴染宮田純一と会った宇川明美は宮田から頼みごとを受ける。



店の女性の間で発生していると思しきイジメについて調べて欲しいというのだ。






Chapter7 相棒は謎の男



増山と会った榎本は公安が増山の身辺を探っていることを告げる。



20年来の知人である増山と榎本が出会ったのは「井山文乃事件」。



外傷のない脳挫傷を診察した医師から超能力の介在を匂わされた榎本が現場を調べる過程で言葉を交わすようになったのが最初だ。



これまで超能力の存在を感じさせたことのない井山文乃に本当に超能力があるのかどうか・・・。






滑稽ではあるものの、各登場人物がそれぞれ主観目線では非常に良い味を出して、それぞれの短編が十分読ませる話になっている。

意外と、事務所から独立してしまった河原崎のキャラクターが良く出来ていて、一番面白かったかもしれない。

超能力師という特殊な職業を背景にしてはいるものの、特に超能力自体がこの作品のキーではなく、単なる味付け。

勿論、事務所長である増山と文乃の関係については、この超能力臭(?)が強いし、それが肝の部分なんだけれど・・・。

短編それぞれが閉じた話ではあるものの、榎本が仄めかす公安のキナ臭い動きも踏まえれば、これは続刊があるのかな。


お奨め度:★★★☆☆



再読推奨:★★☆☆☆