Watashinokiraina2013年、33冊目。東川篤哉 『私の嫌いな探偵』



『謎解きはディナーのあとで』 で一躍有名になってしまった東川篤哉ですが、『謎解きはディナーのあとで』 の原点とも言えるのが、この烏賊川市シリーズでしょう。



シリーズ7作目になるのかな。





死に至る全力疾走の謎



黎明館最上階に暮らすオーナー二宮朱美は、とある真夜中、ビルを揺るがす振動と猫を踏んだかのような男の奇声に目を覚ます。



窓から真下の駐車場を見下ろした朱美は、一階下で同様に駐車場を見下ろす鵜飼とともに、男が倒れているのを発見する。



目撃者の大学生によれば男は全力疾走でビルの壁にぶつかっていったという。



病院に運び込まれた男、中原圭介は一時的な記憶喪失なのか、自身の行動を思い出せないという。



謎が解けないなか、朱美が語った酒屋の高橋が見たという未確認飛行物体の話を聞いた鵜飼は・・・。





探偵が撮ってしまった画



佐々木教授からのメール連絡をうけて佐々木宅にやってきた女子大生小松綾香、文学部の青山教授、森准教授。



呼び鈴に応答しない佐々木に、不審を感じた三人が家に入ると、首に紐を巻いてこときれた佐々木の姿があった。



雪に残された足跡が一つだったことから自殺と考えられたが・・・。



一方、水沢優子という依頼人から(朱美の策略で)夫水沢晋作の浮気現場を押さえるという乗らない仕事を引き受け、張り込みをしていた鵜飼は見事に浮気相手との写真を撮ることに成功する。



しかし、程なくして水沢晋作が死んでしまい・・・。





烏賊神家の一族の殺人



烏賊川市の漁師たちの信仰を集める烏賊神神社。



二宮朱美の遠い知人の紹介で、宮司烏賊神金造から仕事の依頼を受けることになった鵜飼は朱美とともに、烏賊神神社を訪ねるが、そこで殺人事件が発生する。



アルバイト巫女滝沢美穂が「逆さまの祠」で女性の死体を発見するが、鵜飼らが駆け付けると、逆さまの祠に死体など存在しない。



錯覚かと思いきや、帰る途中で再度、鵜飼らが逆さまの祠に立ち寄ると、そこには女性の死体が・・・。女性は鵜飼らがまさに素行調査を請け負ったばかりの金造の長男の交際相手梶本伊沙子だった。



死体消失の謎に首をひねる鵜飼らに話しかけてきたのは、「・・・マイカ」という語尾に特徴をもつ烏賊のゆるキャラ「剣崎マイカ」だった。



こともなげにマイカが鵜飼らに示した真相は・・・。





死者は溜め息を漏らさない



盆蔵山の麓猪鹿村の中二病の少年中本俊樹は、学校からの帰り道、崖から落ちてきた男の口から明るく輝く煙が吐き出されるのを目撃する。



怪奇現象”エクトプラズム”と判断した中本は絶叫を上げ、その場を逃げ出す。



事件は警察から事故と断定されるが、崖から落ちて死んだ男北沢庸介の母は納得できず、鵜飼に再調査を依頼する。



乗り気にならない鵜飼をなんとか黙らせ、朱美は鵜飼とともに猪鹿村に向かった。



崖の上の地主岡部のもとに、案内の巡査松岡とともに向かうと、そこでは岡部が箒の先端を空に向けて踊っているところだった。



岡部は何も知らないというが、鵜飼らの後をつけていた中本は・・・。





二百四号室は燃えているか?



地元の生命保険会社で経理実務をやっているという千葉聡美からの依頼は交際相手辰巳千昭の浮気調査。



朱美は乗り気にならない鵜飼を丸め込んで、なんとか仕事を受けさせる。



偶然、辰巳を尾行する鵜飼を見かけた朱美は、行動をともにする。



助手の戸村流平も加わり、辰巳の暮らす墨谷アパートの向かいの空き家に(不法)侵入すると、張り込みを続ける。



赤いドレスの女の存在に気付いて間もなく、辰巳の部屋から煙が出ているのに気付いた三人が慌てて、辰巳の部屋に駆け付けると、そこには胸にナイフを突き立てられた辰巳の死体が・・・。





前作の『はやく名探偵になりたい』 は鵜飼と戸村のボケ同士が話を面白くしろうと空回りした作品ですが、今作はしっかりとツッコミ役(ときどきボケ)の二宮朱美が登場して話が締まって(?)面白く(下らなく)なっています。



やっぱり朱美の力は偉大だと痛感します。



その配役のせいか、今回は戸村流平は殆ど出番なし。本当に影が薄い。



このキャラクタって、本当に必要?って感じです。



「死者は溜め息を漏らさない」は全体のなかでは、やや鵜飼が真面目に見えてしまう作品ではあるものの、そこは中二病の少年を登場させることで、全体をコミカルなものにしてしまっています。



他の作品は、鵜飼と朱美の掛け合い漫才を存分に楽しむという、このシリーズ本来の面白さを堪能できる作品でした。



お奨め度:★★★☆☆



再読推奨:★★★☆☆