2012年、92冊目。近藤史恵 『はぶらし』
親しくもない高校時代の同級生に居座られてしまった主人公の葛藤を描く作品。
著名な脚本家真壁鈴音のもとに10年ぶりに高校時代の同級生古澤水絵から電話が入る。
深夜にもかかわらず鈴音に会いに来た水絵は7歳になる子ども耕太を連れていた。
離婚し、リストラもされて、行先のない水絵は就職活動をするために、1週間だけ同居させて欲しいという。
これまでひとり暮らしを通してきた鈴音には生活のペースや価値観の異なる同居人との生活はストレスになり後悔するが、1週間の我慢と自身に言い聞かせる。
しかし、1週間たっても水絵の仕事は決まらない。
鈴音は躊躇しながらも退去を求めるが、水絵は更に1週間の同居を求める。
ラッキーで仕事に恵まれた鈴音が不運な水絵を助けるのは当たり前であるかのごとく。
言い争いに疲れた鈴音はもう1週間だけの同居を認める。
少しずつ傍若無人になっていく水絵に不信感を抱く鈴音が、高校時代の友人に電話すると、高校時代から水絵には芳しくない噂があったのだという。
耕太の発熱を契機に、更に居座ろうとする水絵に、鈴音は仕事を紹介するが・・・。
気持ちの良い話ではないけれど、なんとなく気になって読んでしまう。読まされてしまう展開。
何というか、殆ど善意だけで構成された物語というのも気持ち悪いが、悪意を開き直る登場人物の出てくる作品も、(それが単純な勧善懲悪ものならともかく)気持ち悪い。
実体が見えないままに、見えない部分まで含めて水絵に対しては嫌悪感を感じるし、それを許容してしまう鈴音にも苛々するということで、読んでいて何が面白いのかはさっぱりわからない。
それでも、読まされてしまう。構成、表現の妙に感心するが、もう一度読めと言われれば、鬱になりそうだ。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★☆☆☆☆