Hinakomachi2012年、97冊目。畠中恵 『ひなこまち』



『しゃばけ』 シリーズ、第11弾。



今回は若だんなが偶然手に入れた「助けて欲しい」という木札の謎を巡り、若だんなが各種人助けに乗り出すという趣向。



また、今作でも9作目の『ゆんでめて』 の疑似未来像を引きずりながらの展開がところどころ見られます。更に『ゆんでめて』 で登場した禰禰子河童も登場して・・・。





ろくでなしの船箪笥



若だんなが、櫓炬燵に紛れて手にすることになった一枚の木札に首をひねる。



『お願いです、助けてください』





そんな若だんなのもとに困りごとを持ち込んだのは小乃屋の七之助だった。



上方の本家の隠居である祖父が小乃屋に遺した船箪笥が困りごとのタネ。



開かなくなってしまった船箪笥に、小乃屋が貴重な品を隠したのではないかと疑う本家の乃勢屋が船箪笥を小乃屋に引き渡さないのだ。



そのうち、船箪笥を預かった叶屋で怪異が発生し・・・。





ばくのふだ



怪談の名手、噺家本島亭場久の落語を妖らとともに聞きに出た若だんなは寄席の席で、場久に斬りかかろうとする頭巾姿の侍を目にする。



仁吉が部屋の蝋燭を消したことで混乱するなか、妖でもあった場久は逃げのびるが、その頃から江戸で怪しげな騒ぎが頻発するようになる。



悪夢を食うはずの貘の怠慢で、悪夢が現に滲みだしているようなのだ。





ひなこまち



浅草にある人形問屋平賀屋は美しい娘をひとり、雛小町に選び、その娘を手本にし、大名に納めることとなった。



雛小町を選ぶ騒ぎのなかで、平賀屋は地本問屋と組んで雛小町番付なるものを作り始める。その選者に選ばれたのは長崎屋の主人藤兵衛。



藤兵衛の好みを知り、商売に役立てようと長崎屋をうかがっていた古着売りの娘於しなを不審者として追いかけた屏風のぞきと仁吉は、古着の窃盗事件とかかわることになっていく。





さくらがり



若だんなの要望が通り、上野広徳寺へお花見に出かけることとなった一行。



そこへ現れたのは河童の禰々子だった。



先だって、西の河童の難儀を救った礼として、河童の秘薬を届けに来たのだ。



ただし、その秘薬はそれぞれヒトクセもフタクセもある代物だった。



しかし、偶然、そこを通りがかった安居と名乗る侍は、惚れ薬を若だんなに求める。



雪柳という自身の妻に飲ませたいという安居だったが・・・。





河童の秘薬



雛小町の選者に選ばれた若だんなのもとへ、安居の妻雪柳がひとりの子どもを連れて訪ねてくる。



何が起こるかわからないという河童の秘薬を試した雪柳だったが、何も起こらないのだという。



雪柳が連れていた子どもは長崎屋の近くで遭っただけの子どもで、雪柳も若だんなも面識はない。



若だんなは雪柳とともに、町役人のもとへ迷子として預けるべく出かけるが、町は雛小町に絡む騒動で喧しい。



そんななか出会った場久は、ここが夢のなかであると語り・・・。





いつもどおりのテイストで、安心して読むことが出来る。



ラストの「さくらがり」や「河童の秘薬」は、今作を締めくくり、雛小町の展開をうまく纏めようとしたのはよくわかるのだが、逆に、早い段階で、そのカラクリが類推できてしまい、ちょっと興醒めな部分がないではない。



また、今回は若だんなが積極的に他人を助けるという趣向であるためか、いつもなら若だんなを止めるべき仁吉や佐助の存在感が小さいようだ。



栄吉も最近はあまり出てこなくなって、(あまり変化がないようでいて、)少しずつ若だんなの周りも変わってきているのかもしれない。



ただ、久しぶりに今回は日限の親分が登場しましたね。



お奨め度:★★★☆☆



再読推奨:★★★☆☆