2014年、6冊目。五十嵐貴久 『リターン』
『リカ』の続編。
2002年の『リカ』事件から10年。
全く行方をくらましたリカ生存の証が発覚する。
高尾山で発見されたスーツケースから、拉致されていた本間隆雄の遺体が発見されたのだ。
目、鼻、舌、耳を抉られ、削がれた本間だったが、その死因は食物を喉に詰まらせたことによるもの。
10年間、リカはモノと化した本間を秘かに養っていたのだ。
10年前のリカ事件を担当し、結果として発狂した菅原刑事を師と慕う捜査一課コールドケース班に属する梅本尚美は同僚の青木孝子、そして孝子の婚約者であり捜査一課の刑事奥山次郎とともに、リカの事件を追うこととなる。
目撃証言をもとにリカを追う捜査班だったが、誰も手掛かりを見つけることが出来ず、捜査は行き詰る。
秘かに出会い系サイトでリカとの接触を試みた奥山は、リカに辿り着くが、逆襲に遭い、敢え無く首を切断されるなどして、殺害されてしまう。
奥山の姿が見えないことを懸念して、奥山の部屋を訪ねた孝子と尚美は、遺体の第一発見者となる。
秘かに奥山の携帯電話を自身の懐に忍ばせた孝子はリカへの復讐を誓い、リカのことをよく知る尚美に協力を求める。
一旦は断ったものの、引くことのない孝子に押されるように、リカとの接触を試みる。
本間への執着を捨てきれないリカの真理を読み、本間が生きていると錯覚させた尚美はリカを駅に呼び出すことに成功する。
ここで初めて捜査本部の協力を借りた尚美らは駅でリカを待ち伏せる。
刑事たちの姿を察知したリカは電車から降りることはなかった。そんなリカの姿を発見した尚美はリカを追って電車に乗り込むが、逆に衆人環視のなかリカに拉致されてしまう。
全編にわたって暗い印象がつきまとう。
異常犯というか、その理解しがたい部分を常につきつけられ、それを一定程度理解したうえで、次のページを捲れというようなストーリー展開。
リカを誘導するようでいて、結局のところリカに先行されるという徒労感と恐怖感が(作品から感じる気分とは別に)秀逸。
主人公にもたらされる傷も身の毛がよだつものだが、更にラストの主人公の述懐がまた怖い。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★☆☆☆