2014年、4冊目。宮城谷昌光 『湖底の城 -呉越春秋-四巻』
呉越春秋の4巻目。
呉で公子光の厚遇を受ける伍子胥が、公子光を闔閭として呉王にたたせるまで。
孫武に褒小羊を託し、臨淄を経由して呉に戻った伍子胥。
呉の将軍公子光の使者として鱄設諸を迎えた伍子胥は楚への出師の相談を受ける。
公子光の参謀として出師に加わった伍子胥は公子光を助け、雞父の戦いを勝利せしめる。
鱄設諸の言葉から永翁に示された場所を突き止めた伍子胥は現地で知り合った若者干育の協力を得て、地図の指し示した場所から棺を見つける。
何者かはわからないままに伍子胥は子どもの骨を埋葬する。
呉への侵攻を企てる楚王を迎撃するべく秘かに軍を動かした公子光に従い、伍子胥も従軍する。
楚の軍の後方から襲った呉の軍により呉は大勝する。
しかし、公子光が戦場で功を挙げるほどに呉王と公子光との間隙は広がっていく。
そんななか、越の臣胥犴が伍子胥を訪ねて越に招くが、伍子胥はこれを断る。
王と公子光の溝が埋まることは最早ない。
公子光の嫡子終纍からの相談を受けた呉子胥は心を決め、その謀略に手を染めていく。
その手段として黄金の楯を作るべく鱄設諸に手紙を託すと宛の范氏のもとに赴かせる。
鱄設諸はそこで范氏の息子である范蠡に出会う。
范氏から出来上がりが明年ということを聞いた鱄設諸は一旦、呉へ戻る。
そんななか、楚王平が卒する。仇がとれなかったことを悔しがる伍子胥や陽可ら。
鱄設諸の依頼した楯が出来る前に、呉王と公子光の対決のときは来る。
呉王は唯一憚る季子を外遊させると、病平癒の祝いに公子光の邸を訪ねて公子光を謀殺することが計画される。迎え撃つ公子光も兵を地下に籠めるが、兵を邸内に林立させようという呉王のもとに刃が届くはずもない。
追い込まれた公子光に策を授けた伍子胥ではあるが断腸の思いだ。
公子光もまた身を切るように鱄設諸に因果を含めると、魚から抜いた刃をもって鱄設諸に呉王を殺させる。
呉王を殺したとしても公子光の率いる兵は少ない。危機は続くはずであったが、呉王側がほぼ自壊したこともあり、多くの血を流さないなかで、公子光が実権を握ることに成功する。
即位した公子光は呉王闔閭となる。
呉と楚の小競り合いが続き、話の背景としてはダイナミックではあるものの、伍子胥の活躍は乏しい。
この巻のクライマックスである公子光の王権簒奪において活躍しているようにも見えるものの、活躍というよりも暗躍といった感じが強く、なんとなく磊落な印象のある伍子胥との間のイメージとの差にややと戸惑う。
今後は、対楚戦での苛烈な伍子胥が現れてくるのだろうけれど、そこと比べると、簒奪という大きな節目にあっても伍子胥は強い印象を与えない。
ストーリーのなかでは、子ども時代の范蠡が出てくるところが、ややわざとらしくて気になった。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★☆☆☆