Kamisamanokarte32012年、81冊目。夏川草介 『神様のカルテ 3』



ベストセラーとなった『神様のカルテ』 第3巻です。



新たに本庄病院に赴任した内科医師を巡って、医師の在り方を考える一冊になっています。





第一話 夏祭り



”引きの栗原”の異名は伊達ではなく、救急の記録更新をなしとげた7月。



相変わらずアルコール性肝硬変が続き、救急でも運び込まれた横田だったが、翌日、深志神社の例大祭、天神祭で金魚屋(金魚すくい)の店を出していた。



偶然、横田の店の前を通った一止は自身の身体をいたわらない横田に皮肉の言葉をかけるが、それから間もなく横田は昏倒してしまう。



病院にかつぎこまれた横田だったが・・・。





第二話 秋時雨



新たに本庄病院に着任した消化器内科の医師小幡奈美はERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影)では日本でもトップクラスの北海道の札幌稲穂病院から移ってきた優秀な医師。



”大狸”板垣が奈美の指導医を務めていたという縁で本庄病院へやってきたのだ。



ベテランで人当りも良く美人の奈美を信頼する一止だった。



そんなとき、吐血のため救急で運び込まれた患者榊原信一を見て、看護師東西は凍りつく。



「シンちゃん・・・・・・?」「ナオミ・・・・・・?」



動揺する東西だったが・・・。





第三話 冬銀河



砂山次郎は1月から信濃大学に移るため、12月に本庄病院を去る。



次郎を送別するため、次郎、進藤辰也と浅間温泉を訪ねた一止は、そこで辰也から噂の真偽をただされる。



小幡奈美が救急部の患者を処置もせずに一晩放置したというのだ。



患者はアルコール性肝硬変の横田だった。



横田の放置を知った一止は奈美に理由を尋ねるが・・・。





第四話 大晦日



小幡奈美の発言にキレた看護師長外村が”病欠”と称し、病院に来なくなったことで救急部が荒れる。



救急部の不穏についての皮肉もかねて、一止は受け持った患者島内耕三(82歳)の症例について奈美に相談する。



膵癌の疑いが濃いながらも細胞診の結果では癌細胞が見つからなかったのだ。



島内の孫は祖父への負担を懸念するが・・・。





第五話 宴



初詣の一止のもとに、本庄病院を辞めたばかりの次郎から電話が入る。



島内耕三は膵癌ではなかったというのだ。



腫瘤形成性膵炎という悪性ではない腫瘤。



即ち、誤診により耕三に手術を施してしまったのだ。



耕三の術後経過は良好だったが、誤診で手術をしたことに対して、孫は立腹し、一止に説明を迫るが・・・。





エピローグ



耕三の一件もあり、奈美の医師としての在り方を再度見直した一止は、信濃大学で再度勉強をするべく、3月、本庄病院を辞めた。



屋久杉を見送り、わずかの完全な休日を御嶽荘で送っていた一止は新たな住人を迎えたが・・・。





いつも最終巻のような趣きの作品ですが、今度こそシリーズ最終巻のような感じもあります。



まぁ、勿論、信濃大学に戻っただけで、舞台が本庄病院から信濃大学に代わって、という展開もありうるでしょうが、それではちょっとこれまでの患者を中心としたヒューマンドラマとは違うでしょうから、それはないでしょうね。



とはいえ、辰也の抱える問題は解決しないままですから、やはりまだ続くんでしょうか。



各話で、展開にバリエーションはあるものの、話数を踏むたびに、何となく似た印象が出てきている印象もあるので、今後続くのだとすれば、(大きなインパクトのある事象を放り込んで)展開を大きく変えていくのか、物語の収束等何等かの方向性が明確になってくると読みやすいかもしれませんね。



お奨め度:★★★☆☆



再読推奨:★★★☆☆