昨日、「母親が12歳の娘を刺殺した」っていう事件のニュース記事をみた。(まだ内容が突っ込んでないもの)
(テレビを殆ど見ないから、ネット版で・・・w)

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120131k0000m040135000c.html

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120131k0000e040140000c.html

改めて、この事件に関する記事をみて、2つのことを思った。
1つは、
精神医療とその受け皿の足らないところを浮き彫りにしたな、ということ。
2つ目は、
精神疾患への偏見が助長されてしまわないか、ということ。


1つ目。

昨日、最初のニュースを読んだ段階で、薄々感づいてはいたけど、
1記事目を読んで、「あーぁあ・・・やっぱり。」と、落胆した。

落胆したのは、事件に精神疾患が関連していたことではない。
精神医療と、退院後の受け皿が不十分であることに対して、だ。

2記事目によると、この母親は、過去に措置入院(*1~3)をしていたし、
子ども達も、児童養護施設(*4)に入所していた。

1記事目を読んだところで「入院させるなり子どもを保護するなり必要だったんじゃ・・・」と思ったが。
一度復帰してしまうと、その後の支援が難しいのは、確かにある。
復帰した=もう大丈夫、と親が支援を拒否してしまうことが多いから。
(実際にはまだまだ支援が必要だとしても。)
入院や保護は強い権限を持って行う事ができても、その後の支援は、拒否されてしまえば終わり。

ここで支援の重要な担い手になりうるのが保健師なのだけれど・・・
看護師や助産師ほど知名度はあまり無いし、そもそもの人数が足りないために、キャパオーバーとなってしまっているのが現状。
(ex: 単純に、自治体の人口を保健師の人数で割ると、保健師一人当たり1万~3万人の住民をカバーしなければならない、という場所もある。)

知名度で言うと、住民よりは身近にいるはずの行政職員の中でも知らない人がいるとかいないとか。
どんなに拒否されても、根気強くアプローチをかけていくと、支援につなぐことが出来る場合もあるが、それだけの時間を割く事が難しいことは、この単純計算からでも容易に想像できる。

こうやって、一つの事件を突っ込んでみていくだけでも、どれだけ支援の体制が不十分であるかが分かる。
記事内で取材を受けている人が言っている言葉だけでは、表面的に感じられるが、その蓋をあけて考えてみる事、も重要だと思う。



*1:精神保健および精神障害者福祉に関する法律
措置入院:第29条第1項(第23条~第32条)
精神保健指定医(**)2名による診察の結果、その診察結果が「入院させなければ自傷他害の危険性がある」と一致した場合、都道府県知事の権限で入院させる事ができる。
*2:精神保健および精神障害者福祉に関する法律
医療保護入院:第33条~第35条
精神保健指定医(**)による診察の結果、入院が必要とされた場合、本人の同意が無くても、保護者の同意があれば、入院させる事ができる。
*3:精神保健および精神障害者福祉に関する法律
任意入院:第22条第3項~第4項
本人の同意による入院。
(基本的にはこの形式をとることが前提。上記2つの形式は本人の意思に反しているため、その後に問題が起こりやすい。:医療者に対する敵対心、同意をした保護者との関係性の悪化、など。)

**精神保健指定医:一般の精神科医とは異なる。治療上の制限や強制力が必要な場面が多い中で、その妥当性を判断するのは容易ではないため、一定の資格をもった精神科医がその場面に介入する。詳細→wikipedia

※あくまでも簡単に噛み砕いただけなので、正確なことは各法令等のリンクへ。※

*4:児童福祉法
児童養護施設:第41条
保護者のない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む。以下この条において同じ。)、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設とする。





2つ目。

精神疾患への偏見が助長されてしまわないか、ということ。

もうこの事に関しては、深く突っ込む必要もない。最も重要なポイントを、ストレートに言えばいいだけだ。

此処で重要な事は、

「精神疾患を持っている人だから、刺殺事件をおこしたのではない

ということ。


こういう記事を書く記者の人達も・・・もう一言書き加えてほしいな、と思う。
「精神疾患があるが故に、“取り返しのつかない事”を起こしたのではない」
と。

事件があるとすぐ、やれ精神鑑定だ、やれ責任能力だ、と
精神疾患を悪者のような扱いにする。

そのたびに、その他数多くの精神疾患をもつ人が、肩身の狭い思いをする羽目になる。

精神疾患がある=悪い人、事件を起こす人 じゃ、ないんですよ?
世界が、精神疾患に対して垣根が低くなり始めた頃に、日本だけ、敷居をさらに高くしたという黒歴史。
ようやく少しずつ垣根が低くなり始めているのだから、
メディアも、こういうデリケートな問題を取り上げるときは、
垣根を低くする努力や工夫をしてみてはどうだろうか。