「侑子」
クロウは家の主に呼び掛けつつ、カラ、と軽い音をたてて戸を開いた。
二人が互いの家を行き来し始めたのは最近ではない。
連絡もなくどちらかの家に居座るのは日常となっていた。といっても、侑子がクロウの元へ訪れる方が圧倒的に多かったが。
声をかけたはいいが返事がない。
奥の部屋にでもいるのだろうかと思い、とりあえず居間へ行くと、侑子が長椅子に横たわっていた。
一瞬、彼女が息をしていないように感じた。
しかしそれは思い違いだったようで、微かに肩が上下しているのが見える。
胸に込み上げるひんやりとした感覚が消えて、クロウは胸を撫で下ろした。
自分が止めた彼女の時間が進むわけがないのだが、やはり敏感になっているようだった。
ほっとしつつ長椅子に近付いて彼女を見下ろすが、全く起きる気配がない。
よほど疲れたのか、それとも夜更かしでもしたのか、熟睡していた。
「こんな所で寝て。風邪を引くよ、侑子」
苦笑しながら自分のローブをかけようとして、思わずその整った顔に見とれた。
陶器のように白い肌に、長いまつ毛、紅い唇。
そして豊満な体を覆うように広がる長い艶やかな黒髪。
まさに魔女だ、と彼はその美貌に思う。
妖しげで美しく、人を惑わせ、だけど触れるのを躊躇わせる。
妖艶、という言葉は彼女のためにあるのではないかとすら思わせるほどだ。
じっと見ていたらさすがに彼女も視線を感じたようで、ゆっくりと瞼を開けた。
それすらも美しく感じてしまう自分はもう彼女に狂ってしまっているかもな、と彼はのんきに思う。
「…クロウじゃない、いつ来たのよ」
「ついさっきだよ。声をかけても返事がないと思ったら君が寝ていた」
あらそれは失礼、と詫びる気のない彼女が起き上がった。
「お茶でも飲む?」
「侑子が淹れてくれるのかい?」
「あなたが淹れるのよ、当たり前じゃない」
傍若無人な彼女は今日も健在らしい。
はは、と笑いつつじゃあついでに何かお菓子でも作ろうかな、と考える。
「それにしても侑子がこんな所で昼寝だなんて珍しいね」
「ええ、まあ。昨日は寝るのが遅かったから」
「何か作ってたのかい?」
「お酒に合うものが無かったのよ。自力で作ろうとしたけど苦戦して時間かかったの」
やっぱり夜更かしが原因か、とクロウは納得する。
魔法でまた何か面白がって作っているのかと思ったら料理とは。
珍しいこともあるものだ、などと思いながら食料庫から食材を取り出していると、侑子が思い付いたように言った。
「ああ、そうよ」
何がだい、と聞こうとしたが侑子の方が少し早く言葉を紡いだ。
「今度からそういう時は貴方を呼べばいいんだわ」
何だか身勝手な発想のような気もするが、いつも通りの彼女にクロウは苦笑した。
「ああ、君が呼べばいつでも応えるよ」
どんなことだって、必ず叶えよう。
対価無しに何もあげられなくなった彼女への、せめてもの報いとして。
いつか来る"その時"までの時間を、君に捧げよう。
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突然のクロ侑。
何書きたいんだかまとまんない感じになった。
文才欲しいです。
とりあえず一日一題、一日目クリアです…!(短いけど)
駄文失礼しました。