野ばらには悪癖がある。



ピンポーン。 インターホンを押すと、しばらくしてガチャ、とドアが開いた。

「あ、野ばらちゃん、俺の芯って…」



いつからなのかは知らないが、少なくとも3年以上は前から、自分では制御できていない。



「アンタの芯?ラウンジにでも置いてきたんじゃない?」



自分の身体が見られている自覚がない、これが彼女の悪癖。



固まる反ノ塚などお構い無しの彼女に彼はため息をつく。

「野ばらちゃん…何回も言ってるけどさ、その格好はないでしょ」
「何よ、暑いんだもの別にいいじゃない」

何度目かも知れぬその指摘にも彼女は全く反省の色がない。 いつも通りの返答に正直呆れさえ感じた。

「いや、だからさ…下着姿って他人に晒すものじゃないでしょ」

そう、彼女を訪ねると三分の一の確率で下着姿で応答するのである。
一応お年頃の男の範疇に入る反ノ塚の前であってもそれは変わらない。プロポーズさえしてきた男であっても、だ。
とはいえ部屋を訪ねる人など彼ぐらいしかいないのが事実だった。
このマンションは表向きにはセキュリティを売りにしているので、郵便はコンシェルジュの猫月が受け取り、来訪者はラウンジまで本人が 会いに行く。
他の住人達は部屋を訪ねる程の用事などは基本的に無く、大抵がラウンジで会う時や電話で済ます。物を借りたりの用は基本自分のパート ナーに頼むものなのである。 よって反ノ塚は必然的に自分のSSである彼女を頼ることになる。

「別に一枚着てるんだからいいじゃないの。下着だって立派な衣服よ」
「いや、そういう事じゃなくて…俺だって男なんだしっていうか…もうほんと何か察して…」

なんて言えばこの鈍すぎる女性は理解してくれるんだろう。
俺だって、今は高校も無事卒業した立派な18の男なのだ。のれんの向こうのDVDだって借りれるし、そういう事だってしたことも知識もある。
要はこう、むらっときちゃうからやめて欲しいのだ。
自分の好みにクリーンヒットしてる女性の下着姿を見て何とも思わない男なんていない。いたら不健全すぎる。

でもこんなことを言おうものなら、すぐさま「ホンット男ってサイテー」という冷たい一言と本格的に冷たい氷漬けにされるのは目に見え ている。
しかしこのままでは精神衛生上よろしくないし、いつか本当に間違いを犯しかねない。

一人悶々としていたら野ばらが怪訝な顔で見てきた。

「…?まあ、とりあえずアンタの芯でしょ?一応探してみるから上がって」
「…どうもお邪魔しまーす」

そんな格好で男を部屋に入れるとか、無用心すぎる。
そう思いながら部屋に入ると、自分と同じ間取りの同じ場所にソファーがあって、周りにはグラビア雑誌やら段ボールやらが積まれてい た。

「荷造り始めたのよ、蹴飛ばさないように歩いてね」
「はーい。そっか、あと少しだもんな…っうおっ!?」

言われた端から蹴躓いた。 そのまま前にいた野ばらごと床に倒れ込む。
ドタン、と大きな音がした。

野ばらを潰してたらどうしよう、と思ったが手足には冷たい床の温度が伝わり、安心したのも束の間。 両手は彼女の頭の横、足は細い足の横にあった。
そう、つまり野ばらに覆い被さるような体勢となっている。
どうしよう、この体勢って、その、つまり。

「…ちょっと、どいてってば。なにぐずぐずしてるのよ」

そうだよな、どいて欲しいわな。
でもこっちはドキドキしちゃった訳で、それはこんな格好でいるのが悪いんだし、というかそれを解らせる為だし、これぐらい、いいよな。
そう長々と心の中で言い訳をして、その豊かな膨らみに顔を寄せる。
そして。

「反ノづ…っ!?」

真っ白な胸に赤く刻まれたキスマーク。

その出来に満足して身を離す。

「野ばらちゃん、今度そんな格好で出たり部屋に入れたりなんかしたら、その続き、するからね。覚悟しといて」

言うだけ言って、氷漬けにされる前に部屋を出る。
非常識人間には、あれくらいの制裁が必要なのだ。

なおも言い訳したがる思考の片隅、去り際に目の端で見た彼女の耳が真っ赤だったのを思い出して、反ノ塚はいい気味だ、と思った。





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反ばらss第二弾。
R18パートに行きそうで行かない。
普通の18歳男子って絶対ここで止まんないと思うけどそれは反ノ塚の理性がハンパないってことで。

一日一題、二日目クリア…!ギリギリ…!明日からのネタが尽きた……!