道を教えてください
所用で隣市へ
iPhoneのルート検索を使い
目的地まで約30分と分かり
少しホッとした
コンビニで
コーヒーとサンドイッチを買って出発
地元のはずなのに
通ったことのない道で
それでも最短距離で向かう
あまり運転は好きではない
今日はとてつもなく山道で
曲がり道くねくね
登り上げ降りに差し掛かったところで
ようやく対向車1台とすれ違っただけ
そうこうしているうちに
降ってまた登ってしまっている
間違っているんだ‼︎
わかってはいたけど
怖くて引き返せない
しばらく行くと
ようやく見慣れたバイパスに出た
明らかに来過ぎ
それはよくわかってる
少し先の峠へ
折り返すように登って降りて
やっと目的地近辺の駅を見つけた
ここまで50分
私は一体何をしているのだろう
空は青く車内は暑く
今年何度目かのエアコン
峠は怖くて窓を開けられない
せっかくの緑風なのに
先方で用を済ませ帰路に着く
1時間5分が経過
なんということだろう
往路は迷子だったのだから
帰り道はちゃんとわかって進みたい
けれど交差点に出て
もうさっぱりわからない
もちろん
あの青い看板もあるのだけれど
見渡す限り田んぼで
四方は山々に囲まれている
もうどれが正解なのか
さっぱりわからない
エイヤーと
まっすぐの道を進んだ
民家が途切れそうなところで
急に不安になり
そのまま少しだけ戻った
一軒の工務店があり
若い大工のお兄さんが
玄関先で木材を削っているのが見えた
『すみません 道を教えてください』
もうどうしようもないんだもの
分からないんだもの
『どうしました?』
私は
30分で到着するはずの道を
1時間5分かけてきたこと
そこの交差点で
もうどこへ行っていいのかわからないこと
峠の道は怖くて仕方が無いこと
おそらくとても早口で言ったと思う
大工さんは大笑いして
丁寧に道順を聞かせてくれた
『地図を描きましょうか?』
私は急に恥ずかしくなってしまった
娘くらいの年齢の子だろう
慌てる姿が
急に自分で可笑しくなった
『大丈夫です
わからなくなったら
またそのまま戻ってきます』
『ゆっくり行ってください
道幅はもっと狭くなるけど
このまままっすぐ行けば
大丈夫ですからね
戻ってこないことを祈ってますよ』
なかなかなことをおっしゃる青年だ
おそれいった
『どうもありがとう』
神様仏様大工様
丁寧に丁寧にお礼を言った
青年の言う通り道は狭く
くねくねだったけれど
まっすぐちゃんと
国道へ繋がってくれた
飛び跳ねたいくらい嬉しくなった
来た道を戻って
お礼を言いたいくらい
安心して
どっと疲れたけれど
なんだか清々しい
夕方また
いつもの道をウォーキング
あんなに暑く青かった空が
今はもう降り出しそう
自分の道をちゃんと進みたい
今日はそんな風に思った
20200601
yobiko