今村翔吾著『八本目の槍』

今をときめく新進気鋭の時代小説作家
『今村翔吾』
京都府出身
そして私と同じ滋賀県在住
35歳という若手作家

彼の作品として
『羽州ぼろ鳶組』
『くらまし屋稼業』
の2作品がシリーズ物で刊行。
『羽州ぼろ鳶組』シリーズはNHKのラジオドラマにもなっていて、現在第二弾『夜哭烏』まで放送されている模様。
その他1巻完結の作品が複数あります。

今回取り上げる『八本目の槍』は1巻完結。
歴史好きな人ならご存知だろう『賤ヶ岳の七本槍』と呼ばれた羽柴秀吉の家臣達と石田三成の物語。

私は日本の歴史物に疎く、それぞれの人物が、現代においてどのように評価されているかを知らない。
本当はそこのところを知った上で読むのがよいのだろうと思われる。
そういった知識を持って読むことにより、作者の人物や史実の捉え方が理解でき、作者の意図や込められたメッセージを感じ取り、物語の本当の面白さが味わえるのだろう。

と、そこまで堅苦しく考えなくても、知識がない私が読んで面白かったのは間違いない。

予備知識がなくて苦労したのは、例えば名前。
『加藤清正』と聞けば多少イメージできても『虎之助』と言われると、誰のことかピンとこないのである。
スマホ片手にWikipediaを見ながら読み進めるという体たらくであった。
この辺りの時代をもっと理解してから再読すれば、物語をより深く理解できると思うので、また改めてトライしてみたい。

ネタバレはしないが、ごくごく簡単に中身を。
七本槍それぞれの史実に基づくエピソードを今村翔吾流の物語に仕上げ、1人1話の短編として展開していく。
そして1話毎に張られた伏線が話毎に繋がり始め、最終的に今村翔吾流『石田三成』が見事に描き出される。

この作者、他の著書でもそうなのだが、設定した伏線を丁寧にきっちり回収する。
ただ、丁寧に描かれすぎて、また、できるだけ無理のないようにとの意図が見え隠れする時があり、それが時折クドく感じることがある。
しかしまだデビュー2年の作家である。更に腕を上げてくれるだろう。
これからが益々楽しみだ。

人気シリーズ
『羽州ぼろ鳶組』最新刊
『黄金雛 羽州ぼろ鳶組 零』が11月1日発売予定
もちろん予約済み

最新刊が待ち遠しい作家の1人である。

余談だが、今一番発売が待ち遠しいのは
京極夏彦『鵼の碑』
もう10年以上待っている。
出来上がっているのは間違いないと思われるのだが、永遠に出版されない可能性もあったりする。
というか、恐らく出版されないのではないかと言われているのだが…