『わたしを離さないで』

   カズオ・イシグロ著  早川書房



キャシーは優秀な『介護人』

介護をする『提供者』を選べるほどだ。

幼い頃からある時期まで成長を共にした仲間の介護をしながら、かつての暮らしに思いをよせる。


そこはなぜか絵画などの制作に力を入れられた閉ざされた共同生活。

保護官達の奇妙な態度。


なぜ制作することに重きを置かれていたのか?

提供とは?

かつての暮らしを思い出していくうちに、徐々に数々の疑問が明らかになっていく…




本好きのブロ友さんのおすすめだったので読んでみました照れ

以前読んだ、『クララとお日さま』の作者と同じですね。





『クララ…』もそうでしたが、まず状況が普通ではないのですが、その説明は全くなく物語が始まります。


『え?これはなんのこと?』と言う疑問がいっぱいで、初めはなかなか入り込めませんが、読んでいくうちにわかるのではという期待感でページを進めます。


あるエピソードについて語るとき、『こうでした』『そしてこうでした』と続いていく形ではなくて、最後に予告めいた文章が挟まれます。

だから、『次はどうなるんだ?』という気持ちがかきたてれ段々止まらなくなりました。


と言うのもあるけれど、早く最後まで読んで安心したかったからかもしれない。

読んでる途中から気持ちがどんどん重くなりました。



登場人物達がそれぞれ個性的でその心情が丁寧に書き分けられていて、それが余計に物語の重さを倍加させるのかも。


楽しい物語ではないけれど、切なくて重たくて受け入れがたく、そして考えさせられる。

そう言う意味ではとても面白い本でした。


イシグロさんの別の作品も読んでみたくなりました。


いくつかの情景でそこに日差しが効果的に使われていて心に残りました。

『クララとお日さま』の納屋のシーンも未だに忘れられない。