タロ
大学生編
大学生の頃、F・ジノという
おもしろい友人がいた
その彼とは映画と音楽の話でいつも盛り上がり
そして俺の師匠でもあった
彼のお爺ちゃんは某福岡でも有名な銀行の
元頭取でもあり、母は骨董商、父は不動産屋で
弟は関西の立命館大学に行くという
全部いいところを弟にもっていかれたという
ちょっと不幸な感じの
ボンボン君だったのであるが
なかなかのいい奴ではあったが
こズルいところもあった
話は変わるが
アルバイト未経験の俺にとっては
初めてのアルバイトの面接はとても勇気が必要だったが
働き始めて2年もすると
店の方針に嫌気がさして来て
そのアルバイトも辞める頃には悪政をする新店長に
対して、わざと先に自分を殴らせて
大義名分だ
とキメ顔で言いながら
ラグビー経験者だというそのアホ店長を
タコ殴りにして
その日を限りに
辞めてしまい
伝説の
アルバイターとして
ヒーローに
担ぎあげられて
後世に引き継がれる事になった
この件は今回は
置いておくが。
その例の
ボンボン息子F・ジノが
アルバイトをやってみないかと
タロに持ち掛けてきた
レンタル業務は、
やってみたかったし
F・ジノは親切に面接のやり方など
教えてくれたものだから、
すっかり
F・ジノを信じ切ってしまい
無事に同じ職場でアルバイトが出来ると
思いつつ初日にその店に行くと
店員いわく
F・ジノは昨日付で
辞めてしまったという
新しいアルバイトに行くために
まんまと俺をはめてくれたわけだが
楽しく働かせてもらったことは
感謝している
進級が難しいぐらいに
遊びほうけていたF・ジノと
タロであったが
年度最後の定期試験で
Fジノが本気を出して
勉強しているという話を聞いたものだから
タロは、ある程度自分の
の試験対策をした後で
その当時は流行していた
漫画本
「寄生獣15巻セット」
を、紙袋に入れると
陣中見舞いだとF・ジノ宅に押しかけた
1巻だけでもいいから
読んでくれと
俺の今日はお前んちで
徹夜勉強しようやと
小難しい事ばかり考えてると
留年するぞ、勉強の合間で休憩時間に
読めば、頭がスッキリするぞと
いいながら、
その1巻を
まずは読ませてみた
F・ジノ
「これ、おもしろいねえ」
文科系の趣味人
F・ジノにとってみれば
寄生獣のストーリー性、ホラーなど
とても興味深いものとして
取られていた様子で
1巻を読んだ感想は
すこぶる最高との事だった
では、俺は眠いので
そのまま仮眠を取らせてもらうよと
言いながら、
F・ジノの作った絶品チャーハンを
食べた後で朝まで
寝てしまった
翌朝
ふと7時を過ぎた頃に
目が覚めて、
何気にF・ジノは
寄生獣の
15巻最終章を
今まさに
読み終えようとしている
瞬間を目の当たりにした
タロ
「F・ジノ・・・・?」
少し困った声で話しかけると
F・ジノ
「えへへ・・・」
あのはにかんだ、
寂し気な顔がいまでも忘れられない
一夜漬けで定期試験の勉強を
するつもりだったが、漫画寄生獣15巻
フルセットを徹夜して読んでしまい
見事に留年に
リーチがかかってしまう
その日の試験科目が
3本ともアウトになったことで、
F・ジノは
本気で勉強と
向き合うようになるのだが
その日は本気で翌日の
試験勉強に取り組んだという
彼は本気で
赤点回避の勉強方法で
寝ずにやったという
その言葉を信頼したいのだが
徹夜2日目の
朝7時になったので
5分だけ目をつぶろうとした
F・ジノだったが、
次にハッとして
目が覚めると
カラスが泣いており
夕暮れ時のオレンジ色した
光景を目の当たりにするのだ
絶句・・・・
あー学生生活
テスト受ける事すら
出来ずに終わった・・・
物欲の鬼と呼ばれた
F・ジノは
好きなモノからは
離れられない
我慢できない人物だった
寄生獣の
誘惑に負けてしまった男
俺はそんなお前が好きだ
全部受けれなかった・・・
試験会場に向かわずに敗北・・・
彼は、彼の判断で
F・ジノの大学生活に
終止符を打ったのである
卒業祝いとして
テストがうまくいったタロは
その当時流行り始めた
Tシャツを、友人と長崎旅行に
行った帰り
大学を退学する決心をして
落ち込んでいる彼に
励ましのお土産を持ち込んで
買ってきたよと
手渡すと、F・ジノの顔は
とても嬉しそうな顔をして
中身を確認するも・・・・
身体が急にワナワナして
次の瞬間そのTシャツを
床に叩きつけてしまい
お前帰れ!
と、本気で
怒られてしまった
記憶がある
それから10年
詫びるつもりはないが
社会人になってからの彼の仕事に対する
情熱は半端ではなかった
計画的な転職を繰り返し
30も前半になる頃には
異例の高卒社員として
天下の
HOYOTA
通商に入り
月収80万をたたき出す
ハイアベレージ
サラリーマンに
成りあがったのだ!!
彼本来のポテンシャルを引出したのは
DNAの関係するのだろうが
引導を渡したタロの罪悪感も
晴れたのは間違いない
十三が
タロさんのイメージ通りの
Tシャツを見つけたので
送るよと言われ
喜んでその届いたシャツを
開けてみると
きょとんとしたが
それを見た
嫁さんは
大笑いして
こう言った
そのまんまよね(笑)
俺はそういうキャラで
通っているのか、そうか
ならば堂々と着てやろう
このTシャツの文字に
恥じないような生き方を・・・・
とりあえず
謝ります!!
つづく