『ハイと起たる龜尾に手を採らせ弱々敷く出來る美人ハ鶸萌黄の矢筈胼りの帷子緋縮緬の合着が下から透て見え帯ハ金毛織の千草に虫を織出せしをやの字に〆め金地に塗柄の深草団扇で顔を覆ひ野州の傍らに座を占めたるを瀧江が唯見れば何ぞ圖らん縫子なるにぞ魂消るばかりに打驚き左右の詞も出ざりき』
※変体仮名は環境依存文字のため、平仮名に変換しています
条野採菊『茨の花』より
陸奥の国は由井家に産まれた絶世の美少女・縫子。野州小山の家臣・尾柳但馬へ嫁入りするも、由井家が礼を失した事から姑・瀧江との関係が歪み出す。見目麗しき少女が茨の如き数多の難波を乗り越えていく物語。
文語体で書かれていますが台詞が多いので比較的読みやすい方だと思います(読みやすいとは言っていない)。
それにしても、確かに大衆文学はお話が荒れてなんぼではありますが、姑・瀧江や公式胡散臭……いえ、少々癖の強いお坊様・周瑞の行動に終始突っ込みを入れながら読んでおりました。野州様(朝丸)も大概ではありますが。
確かに最初は妹のお絹と縫子(と、娘の我が儘を止めずに一筆書いてしまった由井家父)が宜しく無いのですが、義母瀧江の仕返しは嫌がらせの域を逸脱しているのですよね。瀧江に対しての率直な感想は「え、そこまで?」です。諸々犯罪ですからね。何だかんだ纏まる朝ドラ的嫁姑問題かと思いきやどちらかというと昼ドラでした。
そういえば序盤に但馬が縫子の父から刀を譲り受ける場面がありましたが、その後特に登場しなかったですね。てっきりどこかで咲之丞や野州様のような大立ち回りがあるのかと。
今回は処理の方法や時期や量を誤ると毒にもなりうる食材をテーマに作ってみました。表にはそうと見せず華やかに。茨の花が見付からなくて白い花で揃えたら華やかというより可愛い雰囲気になってしまいましたがヒロインが美少女なのでそれもまた良しということにします。
ということで鮑の酒蒸し肝ソースと梅豆腐、梅甘酢漬けの仁です。
肝ソースは酒蒸しした際に出た出汁、すりおろした胡瓜、水切りした豆腐などを加えた旨味たっぷりの白和え風です。
梅豆腐の梅は先日ひっそり公開していた手作りの甘いカリカリ梅を使いました。