『巴里はもはや完全に子どもの恋人だった。親の見る眼もいとおしいほど子どもの若い心に巴里の悲哀も歓楽も染みて行った。
』
岡本かの子『オペラの辻』より
子供を手放さないといけない母親の葛藤を描いたお話。これは自伝的小説の分類になるのでしょうか。随筆かな。どちらにせよ名作です。
すっかり巴里に魅了されそのまま巴里で暮らすことを望む息子と、自らも巴里を好んでいながら息子を手放したくない母親と。我が儘だと分かっていながらなかなか承諾出来ない複雑な心情。それが華やかな巴里の情景描写と重なって、こちらまで胸が苦しくなります。
息子が巴里に惹かれることを差して「巴里が染み込む」という表現が良いなと。「染みる」という言葉が葛藤を見事に一言で表していますよね。汚れも染め物も「染みる」ものですものね。
ところで、「一緒に居って仲のわるい親より別れていたってこんなに思い合って居るんですもの」という台詞に大いに頷いてしまいました。
離れていても思い合う親子。理想ですね。
今回作ったのはケーキのオペラ、ヴァニラとチョコレートのアイスクリーム、マーブルのチョコレートを添えて。
オペラめちゃくちゃ頑張りました。層が残念なことになっていますが美味しく出来たので良しとします。ところで作中に登場するカフェ・ド・ユ・ラ・ペイユはもしかしてカフェ・ド・ラ・ぺのことでしょうか。それならミルフィーユの方が良かったかな?と思ったのですが確信がないのでタイトルにちなんでオペラにしました。
なお、アイスクリームの下に敷いているのはクッキークラムならぬせんべいクラムです。日本のものを少しだけ入れたかったのです。ほんのり塩気。
全体的にほろ苦くまとめてみました。
もうすぐバレンタインデーということで、このブログをご覧下さっている皆様に感謝のチョコレートです。素敵なバレンタインデーをお過ごし下さい。