時代は第二次世界大戦前。先の戦争で寝台戦友であった門倉修造と水田仙吉は、兵役を終えた後も家族ぐるみで交友を続けていた。現在は金属事業を興し順風満帆な門倉は、会社勤めで転勤の多い仙吉一家に行く先々で世話を焼く。
そんな二人の少し歪な友情の物語です。恋愛物であり家族物でもあり、反戦文学でもありますね。とても読みやすい文体で、初読の時は最後まで一息に読んでしまいました。
門倉と仙吉の友情が少々特殊というか、現代の言葉で言うと親友というよりはバディですね。仙吉の妻・たみと門倉の胸の内に秘めた両片想いがこのお話の肝なのですが、この関係が最後まで貫き通されるのは良かったなと。門倉の妻・君子さんからしたら心中複雑でしょうけども。登場人物全員が先刻承知でお互いのために黙っている。
そんな大人たちを見ながら、幾つかの出会いを経て徐々に変わっていく水田夫妻の娘・さと子。少女であった彼女が一人の女性として親元を離れるラスト、第二次大戦前の世相が背景としてしっかり描かれているので何とも言えない気持ちになります。所々に入り込むキナ臭いラジオ音声が不穏なBGMのようで絶妙な演出だなと感じました。ラストに向けての伏線でもありますよね。
その後本当にどうなったかまでは書かれていないので、さと子が義彦さんと一緒に水田夫妻の孫を連れて帰って来るなんてこともあったかもしれない。義彦さん御曹司ですしね、恩を売りたい人とか居そうですしそういの有っても良いと思います知らんけど。
今回作ったのは青りんごとじゃがいものポタージュ、焼きコロッケ、青りんごとフォル・エピのサラダ。
ポタージュは「世間なみの友情を清羮とするならば、これはポタージュである。」のくだりから。
コロッケは水田夫妻の夫婦喧嘩のくだり。青りんごは言わずもがなです。
ポタージュと青りんごに焦点を合わせたので珈琲の要素を入れられなかったのが残念。
ちなみにこのポタージュ、青りんごの酸味が爽やかでなかなか良いです。
見事な青りんごが手に入ったのでこのお話で作ってみました。