『私は自分一人の好みから、この頃は白檀を使ひますが、青葉に雨の鳴る音を聞きながら、じつと目をとぢて、部屋一ぱいに漂ふ忍びやかなその香を聞いてゐると、魂は肉体を離れて、見も知らぬ法苑林の小路にさまよひ、雨は心にふりそそいで、潤ひと柔かみとが自然に浸み透つて来ます。』
薄田泣菫『雨の日に香を燻く』より
梅雨についての随筆。
雨を魅力的に描いた作品は少なくて、こちらを拝見した時にとても嬉しく感じたのを思い出します。
雨音を聴き、呼吸を整え、渇いた大地が水を吸うように少しずつ心に柔らかさを取り戻していくあの感覚。それがこんなにも美しく、やわらかく表現されていて、感動を覚えたのです。大好きな随筆の一つです。
今回作ったのは紫蘇のところてんと紫蘇巻き。ほぼ紫蘇の紫一色、濃淡のみで表現してみました。お皿にはのせていませんが緑茶を添えてあります。