『皆は自分たちの醜い心にはじめて思いあたり、もはやあの人の前で頭の上がらぬ想いに顔をしかめてしまうのだった……。』



織田作之助『天衣無縫』より


飾り気がなく邪気の無い軽部と、少々気が強い政子のお見合いから結婚その後のお話。軽部の人柄を政子視点で描いています。
最初は愚痴っぽいのですが、読者は途中で気付かされるのです。「あ、これ惚気だ」と。
といっても家計を考えると妻としては苦労するというのも確かでしょうね。
無邪気でお人好しの軽部ですが、正直、これは現代にいたら悪質な業者にカモにされそうだと思ってしまいました。この時代の人は純粋だったのだな。
結婚観にも時代を感じます。当時はある程度の年齢になったら結婚するのが当たり前だったのですね。
短いお話ですし軽妙で読みやすいので、織田作之助作品を読んでみようかなという方に良いかもしれませんね。


今回作ったのはお見合いデートの牡蠣舟で食べていた酢牡蠣、牡蠣雑炊、牡蠣フライです。
酢牡蠣は出汁酢なので生牡蠣に見えるのはご愛嬌です。
牡蠣フライの下にあるのはタルタルソース。黒いのは刻んだブラックオリーブです。
全体的に生牡蠣色で飾り気がない感じを意識して作ってみました。