田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』より


車椅子の女性・ジョゼの幸せを描いた短編小説。

足が不自由な方に対しての解像度が高いように思います。もちろん一様ではないとは思いますが。それに親の反応がリアルだなぁと。障害や持病がある子供を面倒臭がり、ネグレクトになる親は本当にいるんですよね。親の登場が僅かな回想のみというのがとてもリアル。

坂道の上で車椅子を押されるという悪意についても、車椅子ではありませんがベビーカーで似た事件がありましたので、これも実際に起こり得る事なのでしょうね。恒夫のような人が居合わせて本当に良かった。

引き取ってくれた祖母も亡くなり、生活保護を受け、結ばれた恒夫についても、ジョゼはいつ自分の元を去るかは分からないがそれでいいと思っている。これまでの経験から心に根付いた諦観なんだろうなと。でも本人は幸せそうなので何とも言えない気持ちになります。本当に短い小説なのですが、ジョゼの人生を思わずにはいられません。

二人の幸福な現在から辛い過去の回想へ、そして現在へ戻る。いつまで続くか分からない幸福の中で眠りにつく二人が切ないような温かいような寂しいような嬉しいような、そんな余韻をもたらすのです。




[2022.09.14]追記

虎要素の部分が気になったので作り直してみました。

鶏つくねの上に黄色のズッキーニと茄子で虎縞にしたものを乗せ、昆布と帆立で出汁をとった茄子のジュレ、それに茄子の煮浸しを添えてみました。

めざしのオリーブオイル焼きを二尾乗せて。

めざしとつくねは熱々、ジュレと煮浸しはひんやりのヒヤアツです。

夜のイメージが強いのでジュレは宵闇色。