『なんともつかぬ感動が鶴代の胸をしめつける。子供のころにだけあって、大人にない、たとえば忘れられてしまった古い習慣のように、過去の奥深いところに隠れていた手慣れた感情……そんなものだった。』



久生十蘭『復活祭』より


復活祭の夜に再会する男女。大人の恋が始まるのかと思いきやそうでもなかった。復活祭は子供のお祭りですものね。洒脱な雰囲気で、どちらかというとユーモア小説寄りかなと。鶴代の繊細な心の揺らぎと、暗くなってしまいそうなバックボーンがありながら、オチに思わずつられて笑ってしまう底明るさが印象的です。これもハッピーエンドですよね。

『なにもかも一転瞬の夢だった。』から、状況が転じて『まだ夢はつづいている。』となるのが鮮やかです。復活祭と掛けてこの構成にしたのでしょうか。鶴代はイースターエッグの代わりに夢の続きを見付けたんだな、と。




今回作ったのはデビルドエッグ、それとミモザを少しアレンジしたカクテルを作ってみました。

デビルドエッグはアメリカのイースター定番料理なんだそうです。主要な登場人物が皆アメリカ帰りという事で作ってみました。ゆで玉子の黄身を外し、マヨネーズ、マスタード、牛乳、ハーブソルト、ホワイトペッパーで味付けして白身に戻して盛り付けるだけ。

それから作中に登場する「コクテール」なのですが、調べたらカクテルそのものを示す言葉だったんですよね。おそらく当時そういう名前で呼ばれている定番のカクテルがあったのではないかと思うのですが、「○○コクテール」というレシピしか見付かりませんでした。残念。迷った結果、飾りのミモザと鶴代が着ていたドレスの色に因んでクリーム色っぽくアレンジしたミモザを作ってみました。

全体的にクリーム色なのもドレスの色を意識しています。