池波正太郎『剣客群像』より


武芸者たち、それぞれの生き様を描いた短編集。皮肉を効かせたものや思わず笑ってしまうもの、ちょっと癖のあるお話の詰め合わせです。

個人的には『秘伝』が一番好きです。

三人の弟子、白紙の秘伝書に籠められた師の想い。農耕の道に進んだ泥之助のみに師の伝えたい事が確かに伝わり、剣の道に生きる二人にはついに分からなかったという皮肉。

その神妙な余韻が落ち着いたところで次の『妙音記』を読み始め突然ラブコメが始まって宇宙猫顔になったのはブログ主だけではあるまい。温度差がすごい。

どのお話も中心となる登場人物は考えに一本筋が通っていて格好良いんですよね。それがオチになっているのがまた良い。登場人物を魅せるのに重きを置いた作品という感じがします。

どれもが人の有り様を描いたお話なので情景描写はそんなにないのですが、『ごろんぼ佐之助』の四章始め、茅蜩が鳴く夕暮れ近い道場の様子は、回想あけの場面ということもあり叙情的でとても好きです。服装を気にしてはいけない。当時は冷房がないので仕方ない。




[2023.06.18]追記

作り直してみました。

今回作ったのは太刀魚の幽庵焼き、太刀魚串焼き、雷干し。