『あゝ今半月の今歳が過れば新年は好き事も來たるべし』



樋口一葉『大つごもり』より


年明けの支度もままならない困窮生活を送るお峰の一家。家族の為に奉公先で給料の前借りを御新造さんにお願いし、一度は了承を得るも約束の大晦日という日に反故にされてしまう。困り果てたお峰は奉公先の引出しにあるお金から二圓を盗み出してしまうのです。お峰の葛藤、そして石之助の行動の意味するところとは……という感じのお話です。困窮者の悲哀を描いた短編小説。


意見が分かれる石之助の行動の解釈ですが、個人的には、お峰がお金を盗むのを見ていて庇ったんじゃないかなと思っています。ただ何故そんな事をしたのか理由が分からないので、その後どうなるかは本当に気になりますね。最後読者に投げるとは思いませんでした。こういう終り方も面白いなと。

折角投げられたので石之助の行動理由などを想像してみたのですが、

①親への反感

②お峰への同情

③お峰の弱味を握りたい

④特に深くは考えていない

⑤女の子に良い格好したかったから

他にもありますが切りがなくなるので、一先ずこのあたりでしょうか。個人的には①と②合わせた感じかなと思うのですが、④もありそうな気がします。③は繊細な心の機微を描き込める方が書けば芥川先生風になりそうです。




今回作ったのは蜆の巣籠もり胡麻素麺、里芋の煮っ転がし。

月(お金)を隠すイメージで作ってみました。なお本当は年越し蕎麦の意味でお蕎麦にしたかったのですが、当方蕎麦アレルギーの為年越し胡麻素麺です。

ところで蜆は煮込むと青っぽくなるんですね。


そんな訳で、こちらが2021年最後の更新となります。

本年もお世話になりました。

また来年も宜しくお願い致します。

良いお年を!