『家では餅もまだ搗かない。町内で松飾りを立てたものは一軒もない。机の前に坐りながら何を書こうかと考えると、書く事の困難以外に何だか自分一人御先走ってる様な気がする。それにも拘らず、書いてる事が何処となく屠蘇の香を帯びているのは、正月を迎える想像力が豊富なためではない。何でも接ぎ合わせて物にしなければならない義務を心得た文学者だからである。』



夏目漱石『元日』より


「書いている今は12月中なのに元日について書けと言われても」というような内容の随筆です。非常にユーモラスというか、正直過ぎて笑ってしまいました。季節ものの締め切りに追われた覚えがある人ならば共感する事請け合いです。

それはそれとして、そこはかとなくお正月感を出して来るのも流石ですが、それを差して「書いている事が何処となく屠蘇の香を帯びている」と表現するのが素敵だなぁと。

ところで、「一昨年の元日」は『永日小品』の『元日』の事でしょうか。虚子先生どんまいです。




今回作ったのは餅料理二品。鴨雑煮と橙餅です。

夏目家のお雑煮は例年鴨雑煮だったと聞いて、鴨肉で作ってみました。東京出身でいらっしゃるので角餅焼き餅のおすまし仕立てです。

それと、橙でマーマレードを作り焼き餅にかけてみました。あしらいも橙。




そんな訳で、明けましておめでとうございます。

本年も宜しくお願い致します。