『罪悪といふものが、彼女は心から芽ぐんで来るものだと云ふことを知らない。

 罪悪といふものは頭の上から頭巾のやうに誰れかにかぶせられるものだと思ってたのだ。』



素木しづ『雛鳥の夢』より



主人公・まち子が愛情込めて育てているトマトを、ある日鶏の親子があらしに来ます。まち子は実に近付けまいと石を投げるのですが、それが運悪く雛鳥に当たってしまった。雛鳥を死なせてしまった(本当は生きているのですが)まち子の葛藤、罪悪について描かれた短編小説です。

雛鳥が生きていたから『まち子は今宵も幸福である』というのはハッピーエンドと見せ掛けて皮肉を込めたバッドエンドなのではないかと思ってしまいました。寧ろこちらを罪悪として描いているのかもしれないなと。まち子は自分の罪を恐れるばかりで、雛鳥や親鳥に対しての描写が無いんですよね。とはいえ、まち子も我が子のように慈しんで育てたトマトを狙われていますから、命の重みとしては対等なのでしょうか。倫理の授業に出て来そうですね。

幸せそうなまち子と郷愁を誘う夕暮の描写が優しくて、その風景が美しければ美しい程シュールに感じるという妙。




今回作ったのはトマトファルシとミニトマトの煮物です。トマト畑をイメージしてみました。

トマトファルシはあえての鶏肉使用。ちょっと崩れたのはご愛嬌。全体的にピリ辛です。美味しく頂きました。

ミニトマトの煮物はシンプルな味付け。湯剥きしたミニトマトを煮汁に入れ、弱火で一分煮たらあとは余熱調理です。煮汁にトマトの旨味が出ているので、写真には写っていませんがおまけにスープも作りました。