『・・・・辰男は氣拔けがしたやうな顔をして突立ちながら、聲も立てず、直ぐには手出しもしなかつた。・・・・外では風がザワザワ音を立てゝゐる。疊は石油に浸かつて靑い焰を吐いてゐる。・・・・「この家は燒ける」と思ふと共に、灰燼になつた屋敷跡が彼れの心に浮んだ。』
正宗白鳥『入江のほとり』より
入江のほとりの家に暮らす、とある家族のお話。といっても家族愛で感動物だったり、そんな事はないのです。
印象的なのはやはり火事の場面なのですが、そこで辰男は最初、靑い焰を「観る」んですよね。消そうとする前に、ただ観ている。そして消火の後、村一面が焔の海になる夢を見ます。
多くの家族物の場合、小火騒ぎ等が起きた際に一致団結して家族愛を描いたりしますが、このお話にはそれが無い。淡々としている。そこが不思議と居心地よく感じたのです。
今回作ったのは……今回……めっっっちゃくちゃがんばりました。右へ左へ大騒ぎです。見えますか真ん中にひっそり靑い火が。
内容としてはメバルの酒蒸しのような感じです。甘辛く下味をつけ軽く焼いたメバルに、火をつけたブランデーを投下。見事に燃えておりましたが直ぐに消えてしまうため、慌てて写真を撮ったのでお皿が斜め。ブレブレ。ですがちゃんと靑い火がついて大満足です。味は普通に美味しいです。甘辛く味付けするとブランデーの香りもちゃんと溶け込むので良かったかなと。
飾り気の無い魚料理を燃やして仕上げたかったのです。