『京の紅は 君にふさはず 我が噛みし 小指の血をば いざ口にせよ』


与謝野鉄幹『鉄幹子』より


言葉の連なりであるというのに紅が映える、何とも情熱的な恋の歌。
まあ、この歌が詠まれた時点では不倫なんですけどもね。後に添い遂げる鳳(与謝野)晶子先生に贈った歌です。
こちらは二句目で切れている、所謂二句切れというものですよね。きっぱりと君には似合わないと断言し、次の句で何が来るのかといえば「 我が噛みし 小指の血をば いざ口にせよ」ですよ。京の紅そのものがまず艶やかであるのに、それよりも私が噛んだ小指の血を塗ってみせよと仰る。倒錯的な美を感じますね。
(不粋を承知で念の為に書き添えておきますが、これは文芸の世界だから良いのであって、実行に移すと傷害なのでご注意下さい。あと不倫駄目)



今回作ったのは鮪のタルタル。添えてあるのは芋焼酎『鉄幹』と赤ワインビネガー等で作ったジュレです。
全体的に血を感じさせる紅さにしたかったのと、鉄幹先生は一汁一菜かつ贅沢厳禁だったそうなので、リーズナブルな一品でこの歌の艶やかさを表現しようとしたらこうなりました。
タルタルの上に乗せたのは晶子先生の好物であるユリ根です。本物の血を使う訳にもいかないので、下に黒すぐり醤油で紅を引きました。ジュレには鉄幹先生の名を冠した芋焼酎『鉄幹』と赤ワインビネガーその他諸々を使っています。味付けは全体的に酢醤油に近いです。
ところで鉄幹先生は下戸だったそうなので、このジュレを口にしたら酔っ払ってしまうかもしれませんね。

なお鮪も近所のお魚屋さん○周年特売で購入しているので本当に笑ってしまう程リーズナブルです。調味料類は家にあったものを使っていますし。一番値がはるのは『鉄幹』なのですが、そこはご容赦下さるでしょう、きっと。