『秋という字の下に心をつけて、愁と読ませるのは、誰がそうしたのか、いみじくも考えたと思う。まことにもの想う人は、季節の移りかわりを敏感に感ずるなかにも、わけていわゆる秋のけはいの立ちそめるのを、ひと一倍しみじみと感ずることであろう。』


織田作之助『秋の暈』より


秋のセンチメンタリズムを束ねた随筆です。
この方の表現本当に好きなんですよ。
「(前略)ひとびとが宵の寝苦しい暑さをそのまま、夢に結んでいるときに(後略)」
とか、
「(前略)風鈴の音もにわかに清い。蟬の声もいつかきこえず、(後略)」
とか。
暑い夜に眠っていることを差して「暑さを夢に結ぶ」とする感性の豊かさ。そして紡ぐお話から滲み出る優しさ。素敵だなぁと思うのです。

序盤の「毎夜徹夜しているからである」の一文で諧謔的な随筆なのかと思いきや、もの想う秋に似合いの僅かな寂しさと美しさを湛えた作品でした。

金木犀が咲いていたので作ろうと思い立ったのですが、散ってしまいましたね。



今回作ったのは、金木犀と秋の実りを閉じ込めたガレッ……ガ……何だこれ。草餅。草餅か。

当初はガレットを作ろうと思っていたのですが火加減その他諸々を地味に間違えて生地がお餅のようになってしまい、金木犀と合わせるのに生地によもぎを入れたのもあいまって最終的に変則草餅になりました。美味しいのでまあ良いか。

中身は林檎、さつまいも、南瓜。さつまいもと南瓜は下処理で火を通しバターで風味付けしています。林檎は生のままで酸味を活かす方向です。後味をひんやりさせたかったのでアイスクリームを添えてみました。金木犀のジャムをソースとしてかけています。ガ……草餅は生地も中身もノンシュガー。