『宮「じゃアお浪さんは。うちの兄さんのところへお嫁にいらっしゃるといいこと。そうだと嬉しいけれど。
 相斎「ほんとだワ」とまだあどけなき娘気の。人の心を計りかね。思わずいえばもろともに。いいはやされて今さらに。よしなきことをいいけりと。咄の絶ゆる折しもあれ。
 カチカチカチ。オヤお昼飯の柝でしょう。サア行きましょう。(かけだす音)バタバタバタ』


三宅花圃『藪の鶯』より


明治の世俗と年頃の男女を写実的に描いた物語。近代文学では初の女流作家の作です。

会話で構成される部分が多いのですが、地の文は文語体。篠原義兄妹、斎藤兄妹、宮崎兄妹、松島姉弟と、登場人物にきょうだいが多いので、会話中名字呼びだった時にどちらの事かとやや戸惑ったのはここだけの話。
かぎ括弧の上に名前が振ってあるのが台本のようで、小説に対する試行錯誤を感じます。作中で名前が判明すると振ってある名前もひっそり甲、乙等からそれぞれの名前に変わるので、台本風の演出と捉えた方が良いのでしょうか。

中心になるのは色恋のお話なのですが、文明開化で欧風に染まる社会に対する所見、女性が学問をすることについて、官員批判など、藪で囀ずる鶯達は実に賑やかです。



今回作ったのは〈かすていら〉と、芋と緑茶のスイートポテトチップス、うぐいす餅。作中に登場する落花生を添えて。

作中に登場する〈かすていら〉は某有名店のものなのですが、今回は自作しました。もっと焼きを入れて良かったな。しっとりしていますが味はちゃんとカステラです。

スイートポテトチップスは、スイートポテト生地を固めに作り、緑茶パウダーを混ぜ合わせ、シート状にのばしてカットしてオーブンで焼くというシンプルなもの。藪のイメージで葉っぱの形にしました。

うぐいす餅の中身はこし餡で、真ん中に梅酒に使った梅の実を仕込んであります。甘いお菓子の中にパンチを利かせたいなと。
仕上げに緑茶パウダーを振りました。
梅酒の梅は固めのものを選んだのでしゃきしゃきと食感も良いです。
実の筋に沿って一周包丁を入れ、種を中心にして互い違いにくるっと回すと片側から実が外れます。もう片側は爪楊枝で種を取ります。