『少しは人が悪いけれども、』
『罪にもならぬ一月の洒落。』
『ワハ、ハハ、ハハアッ。』
幸田露伴『珍饌会』より
食い道楽が集まって珍しい料理を持ち寄り、一番凡俗な食べ物を持ち寄った者は冷や水升一杯飲む(今でいうと真冬の暖房の無い部屋でかき氷一杯食べるようなものでしょうか)、という趣向。食べられないものを持ってきたり、食べられるものなのに食べなかったりした場合も冷や水一杯。各々悪戯心を発揮してあれこれ用意するのですが、さて結末や如何に。
という戯曲です。
落語のようなテンポの良さ、丁々発止の掛け合いは成る程舞台で観たくなります。
オチに近付くにつれて珍饌というより下手物になっていくのがなかなかに辛かったですが、お芝居用に書かれたお話なのでそこまで具体的な描写が無いのが救い。いや、それでもかなり来るものがありましたけれども。作中では出された料理はちゃんと食べているから凄い。
当時の食文化を知れるのも興味深いです。まさか後の世でエスカルゴが気軽に(某ファミリーレストランで、ですが)食べられるようになるとは思わなかったでしょうね。あと三平汁は美味しい。
この本には他にも様々な食べ物に関する随筆が収録されていて大変面白く拝見しました。
全て取り入れようとすると季節がちぐはぐになるので、今回は珍饌会に絞りました。
今回作ったのは「鱶の鰭」「鶏の尻の尖処」の磯辺巻き、三平汁。作中に登場した食材を使ってみました。
(流石にオチの料理や蝸牛は無理でした)
鱶の鰭は作中にある通り白湯で戻したものとお茶で戻したものを使いました。それだけでは殆ど味がないので、白湯の方は鶏ガラ出汁と塩少々で煮込み、お茶の方は鶏ガラ出汁と醤油少々で煮込みました。
味付け前の写真を撮っておけば良かったかな。本当にお湯だと銀、お茶だと金になるのですよ。
鶏の尻の尖処は塩焼きにして海苔で巻いてあります。
三平汁は塩鮭、大根、にんじん、じゃがいも。土台は昆布出汁です。塩鮭の塩味と野菜の甘みでほぼ味が付くので、仕上げに酒と塩少々で味を調節。