『暮色を帯びた町はずれの踏切りと、小鳥のように声を挙げた三人の子供たちと、そうしてその上に乱落する鮮な蜜柑の色と──すべては汽車の窓の外に、瞬く暇もなく通り過ぎた。が、私の心の上には、切ない程はっきりと、この光景が焼きつけられた。そうしてそこから、或得体の知れない朗な心もちが湧き上って来るのを意識した。』
芥川龍之介『蜜柑』より
隧道の中の汽車、夕刊の平凡な出来事、目の前には田舎者の小娘。しかし小娘が窓の外に放った蜜柑は、そんなモノクロの疲労と倦怠の中に鮮な光を射します。
文章のコントラストが見事で、本を読んでいながら絵を見ているようでした。
短いお話ですが救いを感じる素敵な小説です。
今回作ったのはブラックココアクッキー、蜜柑のコンポート。
蜜柑のコンポートは中と下にチーズクリームが搾ってあります。なるべく蜜柑をそのまま使いたかったので、まるごとコンポートにしました。
うねうねした形のブラックココアクッキーは疲労と倦怠の表現。作り方はメレンゲクッキーとマカロンの応用です。粉糖とブラックココアパウダーなので味はダークチョコレートに近いです。オーブンの余熱でカリカリに仕上げてあります。
[追記]
画像を元に戻しました。
今年の読書感想料理の更新はこれが最後になります。
皆さま良いお年を。
[2020.01.01]追記
需要があるか分かりませんが、クッキー部分のレシピをのせておきます。
〔材料〕
・卵白 1個分(Lサイズ)
・粉糖 50g
・ブラックココアパウダー 20g
・コーンスターチ 20g
事前にオーブンを100℃に余熱しておきます
100℃が無い場合は110℃で問題ありません(その分焼き時間を少し短くします)
①卵白を湯煎しながらツノが立つまで泡立てる
②粉糖、ブラックココアパウダー、コーンスターチを①に入れ、ゴムベラで混ぜる。ゴムベラを持ち上げた時、生地がリボン状に落ちるようになったらOK
※この時メレンゲの泡は潰れますが気にしない。気になる方はマカロナージュで検索してみて下さい
③スプーンなどで生地をすくい、クッキングシートを敷いた天板の上に好きな形を描く
④100℃のオーブンで60分焼く
(110℃の場合は50分くらいで様子を見て下さい)
⑤焼き上がりを見て、パリっとなっていたらそのままオーブンの中にしばらく置いておく(ブログ主は一時間くらい置きしました)
⑥カリカリになっていたら完成
湿気に弱いので、焼き上がったあとは早めにお召し上がりください。
ブラックココアパウダーの部分をベリー系のパウダーや野菜パウダーに変えたらカラフルなカリカリクッキーが焼けるのではないかと思うのです。