『スピンアトップ・スピンアトップ・スピンスピンスピン──回れよ独楽よ、回れよ回れ』

『彼は誰もいない処でよく地球儀を弄んだ。グルグルとできるだけ早く回転さすのがおもしろかった。そして夢中になって、
「早く廻れ早く廻れ、スピンスピンスピン」などと口走ったりした。するといつの間にか彼の心持は「早く帰れ早く帰れ」という風になってくるのだった』


牧野信一『地球儀』より


物書きの主人公が祖父の十七回忌で里帰りする。母親に父の様子を尋ねると、放蕩は悪くなるばかりで、もうあてにはするなと返される。そんな中、法事の支度を進める母親は、ある箱が邪魔でしようがないと指差した。それは三尺ほども高さのある地球儀の箱だった。主人公はその地球儀を元に書いた短編小説を思い出す──といったお話です。

廻る地球儀。そして祖父から父へ、父から主人公へ、主人公から息子へと、人も巡って行く。
地球儀を廻すことと人の巡りが重なるのは、メタファーというものでしょうか。
父親に対する一筋縄ではいかない心境がリアルに描かれています。

『自分で自分を擽るような思いがした』のは、それを題材に書いていることを知られると気恥ずかしいからか、それとも、父の帰国を心待ちにする正直な気持ちを書き出していたからか、はたまた思い付かないような感情があるのかもしれません。



今回作ったのは、地球儀を模したチョコレート、抹茶アイスクリーム、ブルーキュラソーのシャーベット、シャルドネのグラニテ、チュイール。ブルーベリーとペパーミントを添えて。
全体的に甘酸っぱくてほろ苦い感じです。

アイスがチュイールの余熱で溶けたのはご愛嬌。美味しくできたからまぁいいか。
チュイールにアイスをのせて食べます。

親はかつて子供であり、子供はいつか親になっていく(このお話の中では)。そんなものを表現しくたて、アイスクリームにはお酒とお茶を使いました。

地球儀チョコレートの中はカシスガナッシュが詰まっています。こちらも主人公の複雑な心境を表したいと思い、ダークチョコレートにカシスを混ぜ、ホワイトチョコレートで包んだ形になっています。

チュイールは本当は麺棒などで丸く整形するのですが、今回は箱のイメージなので平べったいままです。一度焼いた後、オーブンの余熱でパリパリに仕上げてあります。