木下杢太郎『食後の唄』より



遠くの物が辿り着いた地で何を思うのだろう、というテーマの詩は他にもありますが、この詩は風景ごと、七色の玻璃を通した陽射しや夏の茹だる空気ごと描き出しているのが印象的です。一枚絵を鑑賞している気分。物悲しさをあまり感じなかったのは、その美しさや、揺蕩うゆったりとした空気からかもしれません。
真夏になったら作ろうと決めていました。


[2021.07.21]追記
作り直してみました。

今回作ったのはショコラ、カカオ豆のロースト、百合の練りきり。

初めてこの詩を読んだ時は夏の窓辺でチョコレートを食べるとは何というチャレンジャー精神……と思ったのですが、そういえば当時のチョコレートといえば飲み物でしたね。いや、固形のチョコレートが溶けかける様を見て『ゆあみしましを』なんだろうか。まぁいいか。
『土のかをりの楂古聿』ということで、今回はカカオ豆から作りました。鮮烈な苦味と酸味、好みで砂糖の量を調節出来るのも良い。甘味は極力控えて、練りきりと合わせると口の中で丁度良くなるよう調整しています。
なお、カカオ豆を粉末状(最終的にペースト状になります)にするのは腕力に余裕がある時をお勧め致します。率直に申し上げて筋肉痛は免れません(日頃から鍛えている方を除く)。

ローストはショコラを作る途中経過のもの。
写真は皮がついた状態(焙煎した後は皮というより殻といった方がしっくり来る硬さ)。皮を剥いて食べます。
香ばしくてパリパリ。苦味と酸味、カカオの旨みとコクがたまりません。甘味はありません。

練りきりの緑の部分は抹茶を混ぜています。
『七色の玻璃を通し』をどう解釈するかで迷ったのですが、如何様にも解釈出来るので、今回はオーロラグラスなるものを使用してみました。

・窓がステンドグラス
・グラスが七色
・グラス、または窓は透明だがカット面がプリズムのように七色に反射する
・窓の外に虹が見える

などなど色々想像してみたのですが、どれでもきっと間違いではないのですよね。