『子供より親が大事、と思いたい。子供よりも、その親のほうが弱いのだ。』
『私の家では、子供たちに、ぜいたくなものを食べさせない。子供たちは、桜桃など、見た事も無いかもしれない。食べさせたら、よろこぶだろう。父が持って帰ったら、よろこぶだろう。蔓を糸でつないで、首にかけると、桜桃は、珊瑚の首飾りのように見えるだろう。
しかし、父は、大皿に盛られた桜桃を、極めてまずそうに食べては種を吐き、食べては種を吐き、食べては種を吐き、そうして心の中で虚勢みたいに呟く言葉は、子供よりも親が大事。』
太宰治『桜桃』より
本年六月十九日は太宰治先生の生誕110年ということで、何か作ろうと思い立ち、桜ん坊の時期ですし『桜桃』にしてみました。
ちょうど電氣ブランを購入してきたので『人間失格』と迷ったのですが、今回はこちらにしました。そんな訳で中央のお酒は電氣ブランです。
親だって一人の人間ですものね。
これを読んだ時、一番最初に浮かんだのはそれでした。
自分に刷り込むように繰り返される『子供より親が大事』
作中の桜桃は美味しいものだったのでしょうね。そして本当は子供も大事だったのだろうな、と。
繰り返される『食べては種を吐き、』
嫌な方向に向かう心を振り払うかの如く桜桃を食べる様子が胸に重く圧し掛かります。
今回作ったのは、中央にお酒、それを囲む桜桃のおつまみ、それに桜桃を添えました。
おつまみは、刻んだゴーダチーズとスライスアーモンドを散らし、その上に桜桃を並べ、蜂蜜を掛けたもの。ブランデーやブランデーベースのお酒に合うのです。
クラッカーなどにのせるとオードブルとしてもお出しできるかと。
中央のお酒は『私』のイメージ。
一見明るく見えるよう盛り付けました。
明るく見せているけど逃げ場が無い、追い詰められている感じ、伝わりますでしょうか。