『もし武蔵野の林が楢の類いでなく、松か何かであったらきわめて平凡な変化に乏しい色彩いちようなものとなってさまで珍重するに足らないだろうと。
 楢の類いだから黄葉する。黄葉するから落葉する。時雨が私語く。凩が叫ぶ。一陣の風小高い丘を襲えば、幾千万の木の葉高く大空に舞うて、小鳥の群かのごとく遠く飛び去る。木の葉落ちつくせば、数十里の方域にわたる林が一時に裸体になって、蒼ずんだ冬の空が高くこの上に垂れ、武蔵野一面が一種の沈静に入る。空気がいちだん澄みわたる。遠い物音が鮮かに聞こえる。』


国木田独歩『武蔵野』より


武蔵野の原生林の美しさ、そこに住まう人々。
視点は木々へ鳥へ空へと巡り、まるで自身が武蔵野の地を散策しているかのようです。
林を抜けると人々の暮らしがあり、そこを過ぎれば今度は野に出る。騒がしさと静寂、光と影、自然と人々。それらが交差して、文章に立体的な輪郭を持たせているように感じます。

この本は表題作の他、幾つかの短編から成る作品集ですが、今回は『武蔵野』に絞りました。



武蔵野の道を模したパイ生地に、ソースを付けて食べて戴きます。ソースは秋から冬をイメージ。二章の日記の辺りです。

初秋:抹茶ソース
中秋:フルーツソース
晩秋:チョコレートソース
冬:ミルクソース

ジュエリーレーズンを使ったフルーツチーズを添えてみました。

こちらを作るにあたり『武蔵野』をマッピングしてみたのですが、「道に迷うことを苦にしてはならない」ということでしたので、マッピングした道を作り、ばらして組み合わせてみました。右側が三又、その後二又になっているのが名残です。谷部分が左側にあるのでそこまで変わっていないかもしれません。