『「あの泥坊が羨しい」二人の間にこんな言葉が交される程、其頃は窮迫していた。』


江戸川乱歩『二銭銅貨』より


時は大正、紳士怪盗なる泥坊が工場事務所から盗み出した五万円(当時は一万円で家や車が買えたそうです)。逮捕される前に何処かへ隠したらしいのですが泥坊はその行方を一向に白状しない。工場の支配人は痺れを切らして、五万円に懸賞金を掛けます。
そんな事件が世間を賑わせている頃、場末の下駄屋二階には貧窮に喘ぐ男が二人。
ある日その一人、松村の机の上にふと置かれていた二銭銅貨からお話は転がり始めます。



基本的にミステリ小説の感想はネタバレ無しの方向なのですが、今回は気になることがあってネタバレ致します。
改行の後に感想を書きますので、ネタバレNGの方は今のうちにお引き返し下さい。




























































































































































宜しいですか?



参りますよ?











銅貨の暗号、解けましたでしょうか。
私は解く前にうっかり読み進めてしまいました。惜しいことをしました。
一転する暗号……自力で解きたかった……まあいっか。



で、気になることというのは。

たぶん『私』は五万円の行方を知っていますよね。共犯者が紳士怪盗本人なのか他の人物かは分かりませんが。

そうでなかったとすると『二銭銅貨を呉れたある人が、飛んだ迷惑を蒙る』のは何故か、という疑問が残るのです。硬貨を加工したからかとも思ったのですが、調べたら貨幣損傷等取締法は昭和22年からなので違いますよね。
それに貧窮した状況で全財産の半分を悪戯の為だけに使う、というのも首を傾げるところです(この後返済を迫ったら悪戯の度を越してしまいますしね)。
この辺りから『私』は五万円の行方を知っていそうだと思ったのです。実際どうかは分からないですけども。

それにしても、松村はかなりショックを受けていたようですので、『私』がその後どうしたのか少し気になります。
ちゃんとフォローしないと友情破綻しかねないですよね、これ。もしかしたら最初から『私』は松村と疎遠になるつもりだったのかもしれませんが。


ともかく。
この短い中で見事に纏まっていてどんでん返しまである良作が日本のミステリ小説黎明期の作品なのですね。
冒頭の一文から引き込まれて一気に読んでしまいました。






今回は銅のお皿の上に一枚の薄い紙切(クッキングシートですが)を敷き、その上にビフテキとフォアグラを盛り付けてみました。
周りのソースは味噌、ワカメ、豆腐、なめこ、茄子、葱のソースです。それと茗荷の漬物となめろう。

お皿の上は富のイメージ(支配人がビフテキを食べているのでそうなんだろうな、と)、お皿の外は普段の二人をイメージしています。

『飯屋ではいつもの味噌汁と香の物の代りに、さしみで一合かなんかを奮発するといった鹽梅であった。』

の辺りです。

ソースの配置は読み終えた方ならお察し戴けるであろう例のアレです。

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[2019.04.15]追記
別の盛り付けパターンの写真にしてみました。
こちらの方が色合い的にも纏まっているかな、と。
漬物を茗荷にしているので香味野菜ならではのしまりがあります。
それと、こちらのお皿では、知らない方にはドットに見えるようにソースの位置を少しずらしてあります。